「花火だ!わっしょーい!」

高校最後の夏休み、受験へ向けての準備で単調になった毎日に少し飽きていたところに櫛枝から『河原で花火しない?』との連絡を貰い、大河と2人で喜び勇んでやって来た。

「足下に気をつけないと転ぶぞ!…って全然聞いてねぇよ」

すっかり日も暮れ、河原に吹く風は涼しく花火をするには最高のロケーションだ。

「竜児!早くおいでよ!」

暫し受験ことを忘れ花火を楽しんだ。
大河にロケット花火で狙われたり、川嶋にネズミ花火を足元に投げられ、櫛枝にドラゴンを片手に追いかけられたりと……

「ハァハァ… お前ら花火の楽しみ方を間違ってるだろ!!」

「いやぁ〜勉強ばっかりで体がナマってるんじゃないかなぁと思って」
「そうだよ高須君、全然日焼けしてないし」

「危ないだろ!」
「まぁまぁそんなに怒らないで、この手持ちのおとなしい花火をあげるから、あとは大河と2人で楽しみなよ」

「…分かった。でも大河はドコに行ったんだ?さっきまでロケット花火を打ちまくってたけど」
「何か疲れたって言って土手の上の方に行ったわよ」

大河を探して土手を上がると、街灯の下にしゃがみこんでジィーっとヘビ花火を眺めて居た。

「不思議だよな、ヘビ花火って」
「うゎ?!びっくりしたぁ!急に後ろから声掛けないでよぉ」
「ゴメン、あんまり熱心に見てるからさ。ホラ、花火貰って来たぞ」

「…線香花火はある?」
「ちょっと待てよ… 有ったぞ、ホラ」

びっくりさせられたお返しに、私は少し嘘をついてみた。

「知ってる?線香花火のパチパチするオレンジ色の部分を恋人同士がくっつけて
それを彼氏が最後まで落とさずに出来たら、その彼氏は一生浮気しないんだって」
「へぇ〜 初めて聞いた、まぁ俺は浮気なんてしないから楽勝だろ」

しかし俺の予想に反して意外に難しく、最後まで成功することはなかった。
「終わった……」

うわぁ!どうしよ、すっごい落ち込んじゃった。

「コンビニに行くぞ!絶対に成功させて俺は浮気しないって大河に証明するんだ!」

「もっ、もう止めよ!十分竜児の気持ちは伝わったから、ねっ?」
「本当か?ありがとう〜 たいがぁ〜」

嘘ついてゴメンね、でも私は浮気の心配なんてしてないのになぁ。
もっとお互いに信じ合えるようにこれからも2人で仲良くしようね、竜児。





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