ルカ「お母さん、目玉焼きまだー?」
竜児「俺のも頼む、半熟でな」
康児「朝は和食がいいんだけどなー母ちゃんご飯無いのー?」
大河「あーもう! いっぺんに言うんじゃないっての!」
竜児「康児、気持ちは分かるが我慢しろ」
ルカ「私は洋食の方が好きだけどな」
康児「日本人と言えば米だろ、米?」
大河「あーはいはい。明日はそうしてあげるから、さっさと食べなさいよ」
竜児「いいからおまえは自分のシリアル食え。パンも食え」
康児「姉ちゃん、牛乳取って」
ルカ「はいはい」
康児「……よっと、サンキュ」
ルカ「康児、いつまでフロスティ食べてる気?もう子供じゃないんだから……」
康児「やだよ、姉ちゃんのは乾いたコーン食ってるみたいでまじーんだもん」
ルカ「……ガキ」
康児「何だよいいだろ、これだってちゃんとカルシウム取れるって!」
竜児「まぁまぁ、朝っぱらからやめとけ、二人とも」
大河「はい、竜児の目玉焼きね、あと竜河のも」

「おう」 「ありがと」

康児「えっ、俺のは無しかよ母ちゃん!?」
大河「あんたは後で……大体、一番食べるの早いでしょうよ」
康児「へーい」
竜児「おうっ! みんす圧倒的だな……何年ぶりだろうな……」
大河「ちょっと竜児、新聞広げないでよ!」
ルカ「康児、牛乳返してよ、ほら」
康児「はいよー」
竜児「どれどれ、今日の目玉焼きちゃんはどうかなー?」
ルカ「お父さん、怖い顔で笑わないで」
竜児「うっ……」
大河「ぷぷっ……もっと爽やかに笑えば言われないかもよ、竜児?」
康児「あー父ちゃん。あんま気にすんなって、何か竜河姉は昨日から機嫌がわりーんだ」
ルカ「康児ぶつよ!?」
康児「うへぇ……」
竜児「ははっ 機嫌が悪い女子には近寄るべからずだぞ、康児?」
康児「分かってっけど……でも今のはしょうがねーじゃん!」
ルカ「もう……お父さんまで康児の味方するんだ!」
竜児「んなことねえよ……って、おい、大河……たいがぁ!?」
大河「何なのよさっきから!? あんたらそろいも揃ってうるさいったらないわ!」

ガン!――

大河「はい、康児の目玉焼き。……ほら、取りなさい」
康児「やっぱ……母ちゃんだよな……一番迫力あるのは……」
ルカ「……決まってるじゃない」
大河「んー?」
康児「何でもない!」
竜児「……おい、大河。食卓にフライパンを置くな。それにな……」
大河「何よ?」
竜児「この目玉焼き、半熟じゃないぞ? 点数を付けるなら45て……」
康児「ああ旨そうだなあ今日もありがとう母ちゃん!(棒読み)」
ルカ「いつもうるさくしちゃってごめんねお母さん!(棒読み)」
大河「……なんか引っかかるけど、まぁいいわ。早く食べなさい」

「「はーい」」

大河「…………で?」
竜児「……………………い、いや……」

康児(なんか見つめ合ってるよ!?)
ルカ(あれは睨み合ってるって言うのよ、このバカ! ていうか、一方的にお父さんが睨まれてるのよ!)
康児(何だよ、姉ちゃん! バカって言うなよな!)
ルカ(これ以上お母さんを刺激しないでよ! あぁもう、私の静かな朝ごはんが……)
康児(姉ちゃん、諦めようぜ……それは無理だぜ?)
ルカ(…………)

大河「そこ……なにヒソヒソ話してんのよ?」
ルカ「いいいいやいや、何でもないよ?」
康児「そうそう、賑やかで楽しいなっつってたんだよ!」
竜児「お、おうっ! そうだよな、大河のおかげでいつも旨い飯が食えて最高だな!」
大河「あらそう?」
ルカ「うんうん、最近また上手になったよね?」
康児「もう絶対間違いないぜ!」
大河「ふふん……そりゃダテに毎日作ってないっての、そんなのいいから食べるのよ」

チーン――

ルカ「あっ、パン焼けた」
大河「あー私が取ってきてやるわ」

パタパタ――

大河「ふ〜ふふふ〜ん♪ ららら〜♪」
竜児(なんつうか……単純だな)
ルカ(お父さん、変な事言わないでよね!)
康児(母ちゃん怒らすなよな! こえーんだから!)
竜児(いつもの癖でな……悪いな……)

パタパタ――

大河「……はい、竜河」
ルカ「あ、ありがとう」
大河「それから、ほら、豆乳も飲みなさい。イソノボンボンよ!」
ルカ「はーい」
康児「イソフラボン……」
竜児「……言うな」
康児「これって何の効き目があんの?」
大河「あんたは健康のためだけに飲みなさい」
康児「……姉ちゃんは?」
竜児「……ごちそうさま」
大河「はい、お粗末様。竜児、もういい時間じゃない?」
竜児「おっと、もうこんな時間か、そろそろ出るぞ」
大河「うん、気を付けてね。はい、バッグ」
竜児「おう。それじゃ、行って来るぞー」

「「いってらっしゃーい」」


大河「ちょっと竜児…………ねぇ……」
竜児「ん? って、ここでか? 二人に見られちまうじゃねえか」
大河「だって玄関暗いし、二人とも慣れてるから別に平気よ……」
竜児「……ったく……しょうがねえな……」
大河「それじゃ……いってらっしゃい、竜児…………んっ」


ルカ「お熱いことで……」
康児「あーはいはい。どうせ見慣れてますよ」
ルカ「……ここに思春期の乙女がいるっていうのに」
康児「ぷっ! お、乙女ってか?」
ルカ「毎朝毎朝、ほんっと飽きないのかな?」
康児「俺が分かるわけねーじゃん」
ルカ「それもそっか……ま、康児に色恋沙汰を聞いたのが間違いか」
康児「色恋沙汰と全く縁が無い姉ちゃんに言われてもな……」
ルカ「何よ! 私だって色々あるんだからね?」
康児「へーへー あ、あれか、男子剣道部の主将? どうしても勝てないんだろ?」
ルカ「普通に考えて男子に勝つのって難しいんだからね?」
康児「でも、気になってるんだろ?」
ルカ「……そ、そういうんじゃないって」
康児「富家先輩、だっけ? ま、姉ちゃんが勝てないなら、よっぽど強いんだろうな」
ルカ「今日の部活で勝つもん」
康児「でもさ、勝ったら余計に告白なんか出来なくね?」
ルカ「こっ! 告白なんかしないって! その前に別に好きとかそんなんじゃ……」
康児「あーあーはいはい。いいねいいね、甘い青春ってやつだ」
ルカ「そういうあんたは好きな子とかいないの?」
康児「あ、醤油取って……サンキュ」
ルカ「ごまかすな」
康児「何だよ、いいじゃん、俺の事は……」
ルカ「とぼけたってダメ。あの大人しいマネージャーの子でしょ?」
康児「うっ!? ゴホッ! ゴホッ! い、いきなり何を……」
ルカ「やっぱりそうだ! へー ほー ふーん」
康児「ちくしょ、ニヤニヤ笑いやがって」
ルカ「違うの?」
康児「あーそうだよ! 悪いか!」
ルカ「康児はおしとやかなタイプがいいのかー」
康児「母ちゃんと姉ちゃん見てるとな……活発な子ってのはちょっと……」
ルカ「元気があっていいじゃん」
康児「それはそうだけどさ……父ちゃんのようになりたくないだろ?」
ルカ「あぁ……ね」
康児「俺は亭主関白を目指すんだっ!」
ルカ「お父さんみたいな家事万能な人っていいと思うんだけどなぁ……」
康児「とか言って、自分だって質実剛健!みたいな野郎に惹かれてるんだからなー」
ルカ「……う」
康児「へっへー図星だろ? あ、もしかして昨日も負けたから機嫌わりーの?」
ルカ「う、うるさいなっ!」
康児「俺も恋とか出来るんかなー? 目付きもこんなんだしよー」
ルカ「男は見た目じゃないよ、お父さん見ててわから……」


竜児「……んむ……おい……さすがにそろそろ……時間が……」
大河「…………あっ……何よ……その分走りなさいよ……ほら……」

「まだやってたんかよ!?」  「長すぎでしょ!?」


竜児「ほら、怒られちゃっただろ?」
大河「だって…………ね、もうちょっとだけ……」
竜児「だーめだ、もう走らないと間に合わねえくらいだ」
大河「……あっ、竜児っ! んもう! あんたらが邪魔するからよ!?」

「そんな事言われても……」 「……ねぇ」

大河「そうだ、竜児。今日の晩御飯なにが食べたい?」
竜児「んーあぁ、そうだな……魚で頼む」
大河「分かった、早く帰ってきてね!」
竜児「おうっ!」
大河「ほらほら、行った行った」
竜児「おいおい、押すなって大河」
大河「しょうがないから、玄関までお見送りしてやるわ」

パタパタパタ――

ルカ「行っちゃったね……」
康児「ああ……もう帰って来なくていいよ……」



大河「……ねぇ……もぅ…………ぃぃ……ょ?……」
竜児「マジで間に合わないって! ちょ、コラ! たっ……」





ルカ「………………」

康児「………………」

ルカ「…………本当に帰って来ないね」
康児「父ちゃん猛ダッシュ乙って……感じかな……」
ルカ「康児は……せめて腕力で勝てる子が……いいかもね」


ガチャ―― バタン――


大河「抑え〜られな〜い♪ 逢い〜たい〜よ〜♪」
康児「はやっ! もうかよ?」
ルカ「……しーっ」

パタパタパタ――

大河「ふふふ〜ん♪ ふふふ〜ん♪ ららるらら〜♪」
康児「………………」
ルカ「……………………」
大河「んー何よ? 二人して羨ましそうな目で見ないでよね」

「見てないよ!」 「見てねーし!」 


大河「そうだ……あんたたち、晩御飯なにが食べたい?」
康児「えーっと……何だろ、肉かな?」
ルカ「うーん……私もお肉がいいな」
大河「何言ってんのよ? 竜児が魚って言ってるんだから魚に決まってるでしょ?」

「……却下されたね」 「……何で聞いたんだ?」

大河「そんで、今日こそ『旨い、旨いぞ大河!おまえ最高だ!』とか言わせてやるわっ!」
ルカ「が……がんば……」
康児「父ちゃん細かいからな……また採点が始まるよな……」
大河「なんたって『また上手になっちゃった』んだもんねぇ……くふふふ……」
ルカ「……康児、分かってるよね?」
康児「はぁ…………またかよ」
ルカ「私の静かな晩御飯のためにっ!」
大河「まだ進化を止めないなんて我ながら素晴らしいわ……見てなさいよ竜児!」
康児「今度数学見てくれよな?」
ルカ「任せておいて!」
康児「ちょー腹減らして帰ってくるぜ!」
ルカ「私もっ!」
大河「ほら、もう遅刻しちゃうわよ? あんたたちも、とっとと学校行きなさいよ」

「「はーい」」

大河「何がいいかな……やっぱりブリ? サンマはただ焼くだけだしね……あぁ迷うわっ!」

「「いってきまーす」」

大河「はいはい、いってらっしゃい」



end




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