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竜児は夢を見た。
一人の少年の夢。
高須竜児は高須泰子の一人っ子にして高須家の長男である。
長男であるといっても特別家の柵があるという家柄でもない。
柵はないのだけれど、ただ竜児は使命感に似た感情を持ち合わせていた。
小学生の時喧嘩で泰子のことを出された時、竜児は初めて人を殴った。
確かに泰子は人に胸を張って誇れる生き方はしていないかもしれない。
しかし、たった一人の家族だった。
この家を泰子を大事なものを絶対に守る。
幼い彼にとって、そして今の竜児にとってもそれはとても大事な感情だった。
守るためには、強くならなくちゃ。
そこからの竜児は喧嘩では必ず勝った。
自分がバカにされるのはいい。
だが、自分の大切な家族や仲間を傷つけられることは、絶対にゆるさない。
デッドマン高須の誕生の瞬間だった。
「うお!!」
夢から覚めたのは午前四時。
周りは静けさの中すこしの朝ぼらけ。
何だ。まだ四時か。と、彼は再び眠りについた。
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第一章 それは突然嵐のように
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「いってきまぁす。朝食冷蔵庫に入ってるから。」
竜児の高校二年生として始まりの朝だった。
高校に着き、親友である北村や能登などと「今年も同じクラスだな。」
などと話をした。
中学でブイブイいわせていた竜児。
ブイブイっいっても、浮いた話などなく喧嘩の話ばっかりだが。
去年、高校に入学していきなり大橋高校番長グループを返り討ちにしてしまったこともあり、周囲は余り彼に関わろうとはしなかった。
しかし、その時何も恐れずに竜児の中身を知ろうとしてくれたのが北村だった。
そんなこんなで、この生徒会副会長にして男子ソフト部キャプテンの優等生北村とは親友の仲にあった。
去年は同じクラスではないものの、春田というヤンキー仲間(めちゃ弱い。)も同じクラスになった。
えっ!!!まず、春田ヤンキー??春田が?
作者、ここまでバカなの?妄想パワー全開じゃん!!!ちょっと病気じゃん。
ごめんなさい。
春田がヤンキーとかどうでもいい設定入れたかったんです。
うん。でも、そこはそっとしておこう。
兎に角、竜児にとっては馴れ合った友達が多い。
なんともラッキーなクラス分けである。
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「ほぉ〜。ロマンチックに(※ベタに、の間違いだよ)その男の子に助けてもらったと。それで大河、今朝はルンルンなわけだ。って、大河の浮気者ぉ〜!コンニャロ!コンニャロ!」
「みっみのりん、ごめんごめん。浮気なんて、まだ名前も知らないないのに。」
「いやーでも格好良いじゃないか。そんな格好良い子あんまりこの世の中いないんだよぉ。ジェントル麺だよ。早く見つけないと伸びちまうぜぇ。」
そんな会話をしながら、実乃梨が今年から一年間お世話になるであろう教室のドアを開けた時であった。
「うそっ。。。……//」
実乃梨の後ろにいた大河は驚いたよぉに手で口を覆った。大河の薔薇の蕾のような唇が少し開く。
嘘ぉ〜。もはや、お決まりベタベタ展開。
作者、もぉちょっと芸増やせ。
「おや?どおした大河?」
「みっみっみのりん。あっあっあ、あの人なの……//」
いるのだ。昨日確かに大河を助けてくれた男の子がいるのだ。
名前すら教えてくれなかったあの男の子が。
「大河。もしかして高須君のこと?」
実乃梨の顔がいかにも興味津々といったそれにみるみる変わっていく。
それと共に、大河のそれはみるみると赤くなっていく。
大河の視線の先にいる高須竜児を指差して問い掛ける親友に、コクッと頷くのがやっとだった。
高揚か混乱か緊張か焦燥かまさしく、おそらくそれら一つ一つではなく全ての感情が彼女の小さな胸に混在していたのであろう。(2つの意味で小さな胸なんだけどね。)
大河の表情はそれら感情を一つで表せるものではなかった。
「高須君っていうの?」
大河が絞りだしたその言葉に実乃梨は優しく微笑んだ。
しかし、直ぐに実乃梨は大河を抱えて教室から少しはなれた非常階段の踊り場に向かう。
人が来ないことを確認した後話しはじめる。
「ではでは明智くん。私が手取り足取り腰取り尻取り教えてえてあげよう。」
「何を隠そう高須君は、この大橋高校最強の不良男子高校生なのだぜ。見た目からして結構恐いグループじゃない?この学校では有名人なんだけど、知らなかったかい?
でも、性格は本当にいい人らしいんだよ。ほらっ、私ソフト部じゃない?男子のソフト部に北村君っているんだけど、北村君は高須君の親友らしいんだよ。それで、北村君が言うにはあんないい奴みたことがないって。。。みんな、高須のことを見た目で判断しすぎだ。って。。。」
実乃梨の話をコクコクと頷く大河。
「北村君とも仲いいし。。大河も私もみんなで仲良くなれるといいね。大河。」
話を終え、教室に戻る。
北村が教室に入ってくる実乃梨に気付いたらしく、こちらを見て朝+新学年の挨拶をする。
実乃梨もその挨拶に応え、北村の方に近づく、実乃梨と行動を共にしている大河も連れ立って近づく。
当然、竜児達のグループも多かれ少なかれ実乃梨の方に視線が向かう。
大河は、竜児が自分に気付いてくれることを望んでいた。
ここで、気付いてくれたならあの人と接点を持てたなら…。
いけ!竜児!お前が助けた女の子に気付いて、格好良く「大丈夫だったか?気を付けろよ。」って言ってやれ!
プロローグで見せたお前ならいけるぞ!人生初めての彼女じゃねーか。それもこんな可愛い子とじゃねーか。いいなぁ。いいなぁ。
「おう!お前、あの時のチンチクリン!」
えっ?
作者は目を疑った。(あくまで文章だからね。)
これまでベタベタ展開上等で来ていたこの物語。
ロマンチックに再会をきめてくれる。作者は安心仕切っていた。
そんな作者は、頭の中で妄想に耽っていた。
その間にこの顔面般若男はとんでもないことを口走りやがった。
チンチクリンは禁句だろ。
何してくれんだ竜児!(いや、お前が書いたんやろ!)
大河の顔がみるみるうちに硬直していく。
「竜児!こいつだよ。去年言ってた『手乗りタイガー』」
アホの春田が付け加えて言い放つ。
みるみる、硬直から苛々に変わっていく。
「おう!?お前があの手乗りタイガーか!」
みるみる…いや、苛々から殺気に変わったのは一瞬の出来事だった。
ビシッ!バシッ!
あぁ〜。今までうまい具合にいってたのに。ごめんなさいね読んでくださってる方々。。。期待を裏切ってしまって。
竜児と春田が気が付いた時には、床に尻餅の体制で大河を見上げていた。
実乃梨があたふたする。大河を止めようと…。
その実乃梨を制止させたのは北村だった。
付け加えて、呟く。
「高須は女には手をあげないし、大丈夫だ。それにあいつにあんな風に接する女子なんか今までいなかった。もう少し様子を見よう。」
実乃梨は先ほど階段で大河に話した内容と、北村の思いを考える。
そして、クスクスッと擽ったそうに「わかったよ。」と笑顔で一言かえす。
「誰が手乗りタイガーじゃ!誰がチンチクリンじゃーー!」
「うわー!!!ごめん!すまん!ごめんなさい!!」
「まちやがれぇー。。。」
竜児と春田と大河。
昭和のコントですか!?
そうツッコミを入れたくなる追いかけっこ。
三人を北村と実乃梨は楽しそうに見ていた。
でも、実乃梨は(作者も)見逃さなかった。
追いかけっこの中、大河の表情に興奮と怒りにかき消されて気付くのは難しいけれど………少しの紅潮が混じっていたことを。
そして、横で温かい笑顔を見せる北村を見て。
なるほどね。そういうことか。
実乃梨だけが知る大河の変化。
それは実乃梨がこれまで大河とずっと居たから分かる。
そしてその変化はこれまで大河が実乃梨に見せてきた表情のどれにも該当しない
ことを実乃梨は理解していた。
北村も竜児の内面を一番真っ直ぐに知ろうとしてきた人物だ。
実乃梨の大河に抱くそれと北村が竜児に抱くそれは少なからず同類であろう。
何やらベタベタラブコメモードが戻ってきたようだ。
今年のクラスは楽しくなりそうだな。
そう作者は思い、彼は屈託のない笑顔で笑うのだった。
って、作者かよ!!
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「あぁ〜」
夕食を済ませた大河は溜め息と共に見もしないテレビをつけた。
広い空間にポツンと一人取り残されたような世界。
大河にとって自分の家はそんなものだった。
「ただいま。」に返事してくれる相手はいない。
自分しか音を立てない。
さみしくて、テレビから聞こえてくる音だけが彼女を落ち着かせる。
そんな毎日であった。
溜め息の後、大河は竜児のことに思い耽る。
再度溜め息をつく。
あんな再会があったものか…………。
折角、運命の人との再会だったのに。
だいたいなんだ?チンチクリンって……
デリカシーもあったもんじゃない。
好きになんかなってない。
あんな失礼な奴。
ふと、カーテンが風に揺れているのが見えた。
真っ赤なワイン色のカーテンは微かに揺らめく炎か。
それとも、大河の揺れる乙女心か。
でも、確かにカーテンは炎のように揺らいでいた。
少し肌寒い。なんと言っても季節の変わり目だ。
換気のために空けておいた窓を閉めに、重い腰を上げる。
「高須竜児!!!!」
窓をあけると、エプロン姿の竜児がいる。信じられない展開に驚く大河。
でもでも、そんなの関係ありましぇん!!俺の妄想ばんざぁい!!
竜児も驚いてしまう。
「逢坂!!お前なんでここに……!!」
「ここっこ、ここは私の家なの。あんたには関係ない。とっところで、何でエプロンなのよ?」
「うぉおう………//見るな!!!」
「フン。あんた学校ではヤンキー気取ってるけど、そういうタイプだったんだ。」
それが意識する相手に浴びせる眼差しか??作者も呆れ顔だ。
「ほっとけ。……俺んち、母子家庭でな。泰子、あっ母親が夜のしてるからいつも一人で家事してるんだ。今だって洗濯物で…そういう事だ。」
「そっそうなんだ。………じゃ、私と同じだ。。。。。」
「私、親と折り合い悪くていまここで一人暮らしなんだ。。。。。」
少し間をとって大河はそれを告げた。
夜のベランダ、月明かりに照らされて愁いを帯びた儚いその表情は、悲しい話をしているに違いないのだけれど、竜児の視線を釘付けにするだけの美しさを兼ねさえていた。
美しいものを見ているはずの竜児はなぜか腹立たしい感情になっていた。
大河を一人にしたくない。
なぜ、彼女を一人にするんだ。。。。
出会ってまだ互いのことを知らなすぎる。
でも、一人にしたくない。。。。。
「…お前、飯もうくっちまったか??」
何を口ばしってるんだ俺は!!竜児がそう思ったのも、当然だろう。
竜児はこれまで女に無頓着なタイプであった。こんな勇気があるはずがない。
しかし、確かに口から出だのだ。
大河は本当にビックリした!!の表情を見せた。
「まだだけど……//」
「おう!!じゃ、俺んちこいよ。余り物だが、今日はトンカツだ。」
竜児のその口調は先ほどのそれではなく。
今度はしっかりとしたものだった。
「あんた、まさか晩飯を口実に家に連れ込もうって魂胆じゃないでしょうね……//」
「おおう??ちげーよ。そんなんじゃねーー!!」
顔を真っ赤にして叫ぶ竜児。
竜児がさけぶやいなや、大河は応えた。
「わかった……//すぐいく!!!着いたら、インターホンおすから!!」
そう笑顔で言い放って彼女はすぐに部屋に戻って行った。
おいおい。窓しめわすれてんぞ。そう叫ぶ作者の声も虚しく大河は一目さんに自室へ走った。何を着ていこう。胸が躍る。
窓から見えなくなった大河のさっきの笑顔。
竜児は戸惑っていた。
胸を締め付ける。
そして、今朝の夢を思い出す。
そっか、、そっか、、大切か、、
何もない平凡な幸せな日々に突然現れて、
突然こんなにも自分を混乱させて。
そう、それはまるで嵐のように。
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大河は急いで用意をした。
嘘こけ!30分は余裕でこしとるぞ!!
まぁ、落ち着け作者。それはお前の妄想だ。
用意をすませ、竜児の家へ向かう。
照れくさい……//
何であんなデリカシーの欠片もない奴のために……突然現れて、突然失礼なこと言って突然優しくご飯誘ってくれて…もう何なのよ……//
そう、それは突然嵐のように
自室の扉を期待と不安と共に空けた。
風が少し勢いをましたせいか、誰もいなくなった部屋で炎のように揺らぐカーテンの勢いも少し増したみたいだった。
第一章 それは突然嵐のように 終
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