「大河ー。たーいーがーってば」
「あ、みのりん、何?」
「『何?』じゃないよ。そっちの春巻一本とこっちの唐揚げ一個、交換しようって」
「あ、うん、いいよ」
「それじゃ、いっただきまーす……うん、やっぱり大河の弁当は絶品だねえ!
 ところで、何をぼーっとしてたのさ?」
「んー、幼馴染っていいなあ……って」
 実乃梨が大河の視線を追えば、そこには何やら言い合い?をしている北村と亜美が。
「あー、北村君とあーみんか。あれはあれで良い事ばっかりでもないとは思うけどねえ。
 隠しておきたい恥ずかしい事知られてたりとかさ」
「うん、でもさ、ああやって気がねなくなんでも言い合える関係っていいよね……」
「うーん……まあ、そうかもね」
 と、そこに、小さなカップを手にした竜児が。
「ほら大河、デザートのプリンだ」
「おや高須くん、今日は宅配便かね?」
「おう、俺がまとめて持ってくれば保冷剤が一つで済むからな」
「あ、そうだ。竜児、今日私みのりんと帰るから」
「何? おい大河、今日は卵の特売だって言っておいたじゃねえか」
「そんなもん竜児が一人で行けばいいじゃないの」
「卵はお一人様一パック限りなんだよ」
「だったら二回レジに並べばいいじゃない」
「そんな不正をするわけにはいかねえ」
「まったく、あんたはそんな面のくせに糞真面目なんだから」
「あー、大河、私ならまた今度でもいいけど」
「いいのよみのりん、こんな駄犬のために気を使わなくても。たかが卵なんだし」
「たかが卵だと?いつもその卵の恩恵にあずかっているのは誰だ。
 卵焼きにオムライスに茶碗蒸し、どれも大河の好物じゃねえか」
「それはそうだけど、卵が無ければ他の物を食べればいいだけじゃないの」
「ほう……そんな事を言うならこのプリンはお預けだ。こいつだって主原料は卵なんだからな」
「何ですって?この鬼!悪魔!」

 実乃梨の視線は、言い合う大河と竜児を交互にチラチラと。
 やがて「ふ……」と溜息とも笑いともつかない声を漏らすと、ひょいひょいと弁当をたいらげて手を合わせ、一言。
「ごちそうさま」



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