「ただいまー」
「あら竜河、お帰りなさい。泰児は?」
「お兄ちゃんなら後片付けでもうちょっと遅くなるって」
「あらそう。ところであんたはずいぶん早かったじゃない」
「早かったって……もう9時だよ?」
「だって、折角のクリスマスなんだし、てっきり朝帰りにでもなるかと思ってたんだけど」
「お母さん……私、まだ高校生だよ?」
「まあ冗談はともかくとして、実際の所どうだったの?」
「ど、どうって……」
「告白したのかってことよ」
「こ、ここ、告白なんて、そ、そんな……」
「はぁ……その奥手さは誰に似たのかしらねえ……」
「……でも、幸せの星にはお願いしてきたもん」
「……何それ?」
「あ、お母さん達の時にはまだ無かったのかな?
 あのね、うちの学校、ずいぶん前に生徒から寄贈されたっていうものすごく大きなツリーがあるのよ」
「それは知ってるけど」
「でね、その天辺にモザイク作りみたいなクリスタルの星が飾ってあるんだけど、それは実は一度砕けたのを直したものなんだって」
「……へ、へー……それで?」
「だからね、失敗したり上手くいかなかった事も、その星にお願いすれば、きっとまた上手く行くんだって。
 実際、二年生の時に家の都合で一度は引き離された恋人が、三年生になったら再会して婚約までしたって話もあるんだよ」
「……まさか、そんな話になってるとは思わなかったわね……
 ん? 『上手くいかなかった事』ってことは、ひょっとして告白しようとはしてたわけね?」
「う……」
「そのへん詳しく聞かせてもらおうかしらねえ……大丈夫、竜児や泰児には黙っててあげるから」




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