「みのりん、ばかちー、こっちこっちー」
 スドバの奥の席で手を振る大河。
「おーう大河、待たせたね」
「ううん、私が急に呼び出したんだもの。ごめんね」
「で?高須君に内緒で相談したいことってのは何なわけ?」
 席につく実乃梨と亜美の前で、大河は表情を曇らせる。
「あのね……その、竜児の事なんだけど……」
「ひょっとして浮気してるんじゃないかとか?」
「何言ってるのよアンタ。竜児が浮気なんてするわけないじゃない」
 ジト目で亜美を見やる大河。
「……はいはい、そーだろーよ。何たって大橋高校一のバカップルだもんねあんたらは」
「えへへ……」
「そこで照れるんじゃねーよ!」
「いやいやあーみんよ、どっちかというと高須くんに毎日求められて体が持たないーとか、そんな話じゃないのかい?」
「み、みみみのりん!そ、そんなコト、なな、ないから!」
 大河はよほど慌てたのか、ばたばたとタコ踊り状態に。
「おおー、見事に真っ赤。やっぱ大河は可愛いねえ」
「……ねえタイガー、ここだけの話、ぶっちゃけあんたと高須君ってどこまでいってるわけ?」
「む、それは確かに気になる所」
 ずずいっと大河に顔を寄せる二人。
「……キ、キスは、いっぱい、してる」
 大河は頬を赤らめつつやや小さな声で。
「……それだけ?」
「大河ー、今更隠し事はナシだぜー」
「……な、なでなでとか……ぎゅっとしてもらったり……とか……」
「……ホントに?ホントにそれだけなわけ?」
 亜美の問いに真っ赤な顔でこくりと頷く大河。
「うわー、高須くんってば紳士だとは思ってたけど……」
「実乃梨ちゃん、そーゆーのはね、紳士じゃなくって草食系っていうのよ」
 呆れ顔を見合わせる実乃梨と亜美。
「だ、だって、その……そ、そいういうことは、少なくとも高校卒業してからだって。ケジメだからって」
「だけどスキンシップはしてるのよね……ひょっとして高須君、かなーり我慢してるんじゃない?」
「うーん、それは大変そうだねえ……色々と」
「わ、私、竜児に我慢させてるの?大変な思いさせてるの?」
「あーもう、泣きそうになってるんじゃないわよ。心配するほどじゃないって……きっと」
「そうそう、高須くんが自分で決めたことなんだし、大丈夫だよ……たぶん」
「そ、そうかな……」
「で、結局あんたは何を相談したいわけ?」
 亜美の言葉に、大河の表情が真面目な物に戻る。
「あのね、この間までバレンタインの準備で一生懸命だったのよ」
「ああ、そういえばあんた、ずいぶん頑張ってたっけ」
「でもそれなら、このみのりーぬ☆櫛枝の友情パワーと指導でなんとかなったじゃん」
「ううん、バレンタインが問題じゃなくて……それで忘れてたんだけど、もうすぐ竜児の誕生日なのよ」
「あー、そいういえば高須くんうお座とか言ってたっけ」
「それって具体的にいつなわけ?」
「……明後日。なのにプレゼント決まらなくて……」
「なるほど、それで相談したいってわけね」
「……そうなの」



「うーん……意外に難しいもんだねえ」
「普通の男子なら手作りクッキーとか手料理とかにしとけばチョロいんだけどねえ」
「高須くんだもんねえ……」
「というか、今私竜児に料理習ってる最中だから。手料理っていうか味見してもらってるし」
「やっぱり無難にハンカチとかでいいんじゃないの?高須君なら、タイガーからのプレゼントなら何でも喜ぶだろうし」
「そういう適当な感じなのは私が嫌なの……去年の誕生日に傍に居られなかった分もあるから」
「でもさー、高須君の趣味関係……料理とか掃除とかのグッズは持ってるか必要ないかなわけだし」
「今から手作りマフラーとかってのも無理なんでしょ?タイガーの腕じゃ」
「ううう……」
 大河はまたもや泣きそうに。
「……もうさ、卒業したも同然ってことでさ、タイガーがリボンつけて『プレゼントはわ・た・し』ってのでよくね?」
「おおあーみん、そいつは面白そうだねえ。高須くんも18才なわけだし、いっそのこと大河の名前書いた婚姻届もセットにしちゃうとか」
「……や、やっぱり、それしかないかしら」
 決意の表情で、ぎゅっと拳を握る大河。
「……た、大河!?」
「ちょっとタイガー!今のは冗談だからね!?」


 結局大河が小遣いをはたいたブランド物のタオルに、竜児は跳び上がって喜んだそうな。



作品一覧ページに戻る   TOPにもどる

inserted by FC2 system