「竜児ー、飾りつけ終わったわよー」
「おう、こっちはもう少しだ」
「それじゃ、盛りつけとか手伝うわね」

 竜児と大河、高校三年生のクリスマスは高須家にてささやかなパーティを。

「ねえ竜児、やっちゃんは?」
「客商売にクリスマスとかは掻き入れ時だからなあ……少し遅くなるかもしれねえって。
 大河は今日はどうなんだ?」
「ママが言うには、朝帰りでも構わないって」
「お、おい……」
「まあそれは冗談だけど、多少遅くなっても大丈夫。でも、帰りはちゃんと送ってね?」
「おう、それはまかせとけ」

「ところで大河、本当に学校のパーティには行かなくていいのか?お前、去年はさっさと帰っちまったじゃねえか」
「そりゃ、みんなで賑やかにってのも嫌いじゃないけど……」
 大河は一旦立ちあがって、竜児の隣に座りなおす。
「こうやって恋人と二人きりのクリスマスの方がずっといいに決まってるじゃない」
「お、おう」
「大体、去年っていえば竜児だって早々にパーティ抜け出したんじゃないのよ」
「そりゃ、誰かさんが盛り上げるだけ盛り上げたくせに自分では全然楽しまないうちに居なくなっちまったからな」
「そうやっておせっかいなことして、失恋して、あげくにインフルエンザで倒れて……あらやだ、よく考えるととっても悲惨」
「俺はおせっかいだったとは思ってねえぞ。それに櫛枝の事は、今となっては良い……とは流石に言えねえけど、まあ思い出だ」
「思い出、か……今考えると色々あったわよねえ……」
「ああ、あの頃は特に……つらい事や苦しい事や……多かったよな」
「でもまあ、終わり良ければ全て良し、よね」
「終わりじゃねえだろ」
「え?」
「俺達は、まだまだ始まったばっかりで……これから先、弱気になったり負けそうになったりする事も沢山あって……
 それを乗り越えて、嬉しい事や楽しい事を積み重ねて、幸せになっていくんじゃねえかな」
「……なによ、今はまだ幸せじゃないっていうの?」
「そうじゃねえ」
 竜児は苦笑しながら大河の肩を抱く。
「もちろん今だって幸せだけどよ。俺達はもっともっと幸せになっていくんだ。一生かけて」
「……一生?」
 大河は竜児の胸板に体重を預けながら、竜児の顔を見上げる。
「ああ、一生だ」
 言って竜児は大河に軽い口づけを。
「大河と一緒ならそれが出来るって、俺は思ってるぜ」
「ん……私も、信じてる……」




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