学校帰りのある日、大河は真面目くさったように言い出した。
「時代はツンデレなのよ」
「…………は?」
竜児は突然のことに話についていけなかった。
それはそうなのである。
「だから、今はツンデレがはやっているんだってば」
このようにイキナリ時代はツンデレと言われても、一体何処のお姫様がそう決めたというのか。
ちなみにツンデレとは、
『初め(物語開始段階)はツンツンしている(=敵対的)が、何かのきっかけでデレデレ状態に変化する(変化の速度は場合による)』
あるいは、
『「普段はツンと澄ました態度を取るが、ある条件下では特定の人物に対しデレデレといちゃつく』
もしくは、
『「好意を持った人物に対し、デレッとした態度を取らないように自らを律し、ツンとした態度で天邪鬼に接する」ような人物、またその性格・様子』
byウィキ●ディア。
いやいや、そんなことくらいはいくらなんでも理解している、問題は……、
「何を根拠にそんなこと突然言い出すんだお前は」
竜児は、至極最もな疑問を大河にぶつけた。
「わからないの竜児?アクア●ラス発売のゲーム(原作はLe●fの18禁」Rou●esに出てくる湯●皐月といい、電●文庫の灼眼のシ●ナのシ●ナといい、MF文庫のゼ●の使い魔のル●ズといい、みんなツンデレじゃない!!」
そして返ってきたのは意味不明な答えだ。
唯一わかったのは、確かにそれらが共通性を感じさせるという点だけ。
その共通性がツンデレ以外の何かな気はするが、それが何なのかは皆目見当もつかない。
こんな時は何を言っても無駄だとこの春からの付き合いで理解していた竜児は曖昧に頷いておくことにした。
「あぁはいはい、そうだな」
「でしょ!?で、私は北村君ゲットの為にツンデレを会得しようと思うの!!」
途端、すぐさま後悔。
何で曖昧に頷いておいてしまったのか。
「いやお前、会得ってそれは会得するもんじゃねぇだろ?」
「い、良いのよ、これも北村君の為の努力だと思えば」
「まぁ、悪いとまでは言わんが……」
「そういうことだから、アンタ手伝ってね砂糖ナメクジ犬」
大河は立ち止まり竜児に指を指して言う。
「はぁ?」
何故ツンデレの極意を会得するのに付き合わなければならないのかと竜児は不服そうにする。
「アンタ私の為に何でもするって言ったでしょ!?」
しかし、二言目にはいつも大河はこれだった。
ここまで来たら次に来る言葉は相場が決まっている。
「私、こんなこと頼めるのアンタしかいないんだから!!」
半泣きになりながら懇願するように大河は竜児を見つめる。
これを見ると、竜児はどんな無理難題でもやむなく、飽くまでやむなく頷いてしまうのだから不思議でしょうがない。
「……おぅ、仕方がねぇな」
大河はその竜児の返事に満足そうに頷くと、足を再び前へと向け、
「……ありがと」
小さくお礼を言った。
「ん?何か言ったか?」
「な、何でも無いわよ馬鹿犬!!帰ったら早速特訓よ!!」
大河は慌てて首を振る。
「へぇへぇ」
竜児は、仕方がなさそうに返事をする。
そんな帰宅途中の二人の影が夕日によってまるで恋人同士のように綺麗に並ぶ。
ツンデレ免許皆伝の日は……遠くないかもしれない。




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