「見て竜児!沖縄フェアとかやってる!」
「……何も買わねえぞ」
「えー!?ちんすこー!さーたーあんだぎー!」
「大河……今日は何の為に駅ビルまで来たのかわかってるか?」
「新しいお店の、絶品って評判のマドレーヌを買うため」
「正解だ。ついでに言うと大河が遊んだり買い物してる間俺がずっと並んでて、さっきようやく買えたばっかりだ」
「何よ、お菓子はいくらあってもいいじゃない」
「駄目だ。せっかくの絶品マドレーヌだぞ、じっくり味わわないとMOTTAINAIじゃねえか」
「何よ、この貧乏性」
「それだけじゃねえぞ。俺はこのマドレーヌの味をしっかり確認して、出来ればうちでも再現したいんだよ」
「いいわよ、私が自分のお金で買うから。そんで竜児には分けてあげない」
「……また太るぞ」
「……う」
「あのダイエット地獄をもう一度経験したいってんなら止めねえけどな」
「……ううう」
「来年になれば修学旅行は沖縄なんだし、焦ることはねえだろ」
「……3ヶ月近く先の話じゃないのよ」
「うーん……ちんすこうは流石に無理だと思うけど、サーターアンダギーなら今度作ってやるよ」
「本当!?」
「あれって確か沖縄の家庭のおやつだろ。ちょっと調べればなんとかなると思うぞ」
「よし、よく言った!うちに来てマドレーヌを食っていいぞ!」
「光栄であります、サー」
「あ、そうだ。竜児、プリクラ撮っていかない?」
「はあ?何だよ突然」
「さっき、ちょっと面白そうなの見つけたのよ」
「まあ、構わねえけどよ……」


 生徒手帳に貼られた小さなシール。
 それが呼び起こす記憶は、かつての輝ける日々。
 そこで共に居た大河は、今は遠い空の下で。
 だけど、必ず、いつか、また。


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