「ここが3……てことは、こっちが9で……よし、解けた!」
「嘘っ!?」
「嘘じゃねえぞ……うん、間違いもねえな。ほら、確認してみろよ」
「……う……た、確かに……」
「大河、約束は忘れてねえだろうな」
「……忘れてないわよ。数独十問、先にクリアした方が何でも一つ言う事を聞かせられる……よね」
「おう。さて、大河には何をしてもらおうかな〜」
 悔しそうな大河を前にニヤニヤと笑う竜児。
「こ、これからずっととか、物やお金の遣り取りは無しだからね!」
「わかってるって」
 恨みがましく睨み付ける大河を見ながら、竜児はふと気づく。
「……あれ?」
「どうしたのよ」
「……思いつかねえ」
「は?」
「いや……大河にしてもらいたいことってのが……思いつかねえんだよ……」

「……ホントに何も無いわけ?」
「だってよ、暴力とか暴言とか、一時だけ止めさせても仕方ねえじゃねえか」
「ほ、他に無いの?掃除とか洗濯とか……」
「俺がそのへんを他人に任せると思うか?」
「それじゃ、料理とか……」
「うーん……まあ無くはねえかもしれねえけど、教えるのもドジのフォローをするのも俺だからなあ……
 自分で作るより却って大変そうじゃねえか」
「ぐ……」
「な?ねえだろ?」
「……なんか、罰ゲーム的なものとか」
「俺に無意味に他人をいたぶって楽しむ趣味はねえぞ。川嶋じゃあるまいし」
「こ、コスプレとか……」
「衣装を用意するのは誰だよ。そんな簡単に作れるもんじゃねえぞ、あーゆーのは」
「……そ、その……え、えっちな、こととかは?」
「んなっ!?ね、ねえよ、絶対に」
「あら意外。エロ犬のくせに」
「大河……そ、そういうことを、冗談でも言うんじゃねえよ……俺が本気にしたらどうするつもりだったんだ」
「……殴ってたわね」
「……まあ、そうだよな」
「だけど、ホントの本当に何も無いの?」
「だから、無いって言ってるじゃねえか」
「ふーん……そう、なんだ……」
「……大河、どうした?」
「つまり、竜児にとって私は、何も求めるものが無い……必要ない人間ってことなんだ……」
「そ、そうじゃねえって!その……大河は、一緒に居てくれるだけで十分っていうか……
 特に求める事が無いってのは、そのままでいてくれればいいってことでさ」
「よし!」
「へ?」
「今、言ったわよねえ……『そのままでいてくれればいい』って。了解したわ、私は普段通りにしてる。
 これで竜児の権利は終了ね。さ、次は格ゲーで勝負といきましょうか」
「ず、ずるいぞ大河!」





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