先日申し込んだサプリメントの試供品が届いていた。雑誌に掲載されていた広告では「ぼんきゅっぼんも夢じゃないとか。
彼氏を見返せ!」みたいな扇動的なコピーが書かれていた。へぇ〜っと眺めていたら、それを亜美に見つかり、
「こんなの効果ないわよ。藁にもすがる気持ちは分かるけどね。」と軽く馬鹿にされた。
でもなんとなく気になったので、気休めだと自分を慰めながらもこっそりと試供品の申し込みをしてしまった。
それが今日届いたのだ。
服を着替えた後で、飲んでみたけど、別にすぐ利くわけでなし別に感想もなくそれっきりになった。
その後いつものように、竜児のアパートにいって晩御飯を食べ、眠くなったから家に戻って寝てしまった。
翌朝目が覚めたら何か息苦しさを感じた。変だな、病気かなと思いながらもとりあえずトイレに行こうとベッドから立ち上がった。
ふと鏡に目をやってびっくりした。
身長が伸びてる・・・しかもそれに胸も・・・。自分の胸を両方の手のひらで掬い上げてみる。いままで願ってもできなかった
ことができるようになった。息苦しさは自分の成長に対応できなかったパジャマにあることがわかった。
「ばかちーとおなじくらいかな。すごい。」
全部の服は丈やらが足りずに着られなかった。竜児に電話して泰子の服を窓越しにほうってもらった。
それを着て、竜児の下宿にいった。普段は勝手に上がりこんでしまうのだがびっくりさせようと玄関のチャイムを鳴らした。
はいはいと竜児の声がして、程なくドアが開けられた。
「すごいでしょ?」
「えーっと、どちら様です、か?」
かなり困惑しているようだ。
「私よ、大河。ご主人様の大変身が分からないの?」
「大河?どうして?」
「サプリメントが聞いたみたいね。」
そういってびっくりしている竜児を押しのけ部屋に上がった。
「すごいでしょ。自分でも驚いているの。まさにセクシーダイナマイツ。私に惚れ直したか?」
竜児はじっと大河をみていて、しばらくした後で口を開いた。
「俺、チビで貧乳なお前が好きだったんだ。今のお前はどうもな。」
「え、マジ。」
テンションが一気に下がった。別に竜児の好みなんてどうでもいいのに。いままですごく願ったこの体なのに。何か苦い気持ちでいっぱいになった。
と、ここで携帯の電子音がなって本当に目が覚めた。竜児のモーニングコールだ。ぐっすり寝たはずなのに爽快感はない。
起き上がって鏡を見たらいつもどおりの自分だった。がっかりと安心が半分ずつきた。身支度を済ませて竜児の家に朝ごはんを食べにいく。
「おはよ。」
「おぅ、おはよう。なんか機嫌わるそうだな。」
「どこかのロリコン変態野郎のお陰でね。」
「なんだそりゃ。まあいいや。」
テーブルには仕事後仮眠をとっていた泰子もいて寝ぼけている。
いつもと何も変わらない普通の朝食になった。
おわり
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