「竜児、これあげる」
 そう言って大河に渡された箱の中身は、
「おう、ジグソーパズルか。へえ、今はこんなにピースが小さいのもあるんだな。
 白地に黒ラインのみとはなかなか手強そうな……あれ? なあ大河、これ完成図がねえんだけど?」
「そっ、それは、組み上げてからのお楽しみってことよ」
「おう、そうなのか。それじゃ早速……」
「だだ、駄目っ!今はまだ駄目よっ!」
「……何でだよ?」
「ほら、その……せっかく恋人と二人で居るのに、片方が黙々とパズルやってるだけじゃつまらないじゃない」
「おう、そりゃそうだな、すまねえ」


 翌朝。
「おはよう竜児」
「おう、おはよう大河」
 いつものように並んで登校する二人。だが大河はどこかそわそわとしていて。
「……ねえ竜児、昨日の、その、パズルだけど……」
「おう、あれか……ぷっ……くっくっくっ……」
「え?え?……ちょっと竜児?」
 突然肩を震わせて笑い始める竜児と、予想外の反応に途惑う大河。
「いや……ペン先でも当たったんだと思うけど、余計な線が入ってるピースが一つあってさ」
「う、うん……」
「『大』が『犬』になってたぞ」
「……へ?それって……」
「つまり、『竜児犬好き』って」
「えぇぇ〜〜〜〜っ!?」
「いや、大河が何を言いたかったのはわかるけどさ……くっくっくっ……」
「ご、ごめんなさい竜児」
「いや、逆に大河らしくていいじゃねえか。部屋に飾っときたいから、今日の帰りに額買いに行こうぜ」
「だだだ駄目っ!飾るとかっ!」
「何でだよ」
「恥ずかしいじゃないのよ!」
「俺は恥ずかしくねえぞ」
「私が恥ずかしいのよ!パズル返しなさい!」
「嫌だね。あれはもう俺の宝物だ」
「おっはよう大河!高須くん!朝からケンカとは珍しいね?」
「お、おはようみのりん」
「おう櫛枝。いや、実は大河がな……」
「言うなーっ!」




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