「大河ー!おはよーう!」
「みのりん、おはよう」
「おや、珍しく一人?高須くんは?」
「竜児はちょっと用事があって先に行ってるの」
「そのわりに大河は機嫌良さそうだねえ……さては、昨日何かイイコトがありましたな?」
「あ……わかる?」
「わからいでか。で、具体的にはナニがあったのかね?さあ、このババに話してみなされ」
「え〜……でも……」
「何だよ〜、水臭いぞ大河〜。親友じゃんかよ〜」
「……ん、それじゃ……あのね、昨日、竜児と初めてのデートだったの」
「…………初めて?」
「うん。単に一緒に出かけたり買い物したりじゃなくて、練習だったりもしない正式な『デート』ってのは、初めて」
「それは……まあいいや。それで?」
「やっぱりデートの醍醐味って待ち合わせからじゃない?で、駅で待ち合わせることにしたんだけど……
 私、遅れないようにしようと思ったら逆に早過ぎちゃって」
「ふんふん」
「それで竜児を待ってたらね、ナンパ野郎が声かけてきて。デート前だし穏便に済ませてやろうと思ったんだけどしつこくて」
「あちゃー、それは大変だったねえ」
「腕掴まれて、さすがにぶん殴ってやろうかと思ったんだけどね。ちょうどその時竜児が来て、『おい、人の恋人に何してやがるんだ』って」
「ほー、いきなりそれってのは温厚な高須くんにしては珍しい物言いだね」
「うん、あれは本気で怒ってる目だった。ナンパ野郎もビビっちゃって、もう平謝りで退散してったわ」
「ううむ、さすが高須くん……」
「それが一転してね、私の事をものすごく心配そうに見るのよ。『大丈夫か?変なことされなかったか?』って。
 別に自分でなんとか出来たんだし、いくらなんでも過保護すぎると思わない?」
「いやまあ、それだけ高須くんが大河のことを大事に想ってるってことじゃないかな」
「や、やっぱりそうかな?……えへへ……」
「そうだよ、間違い無い!……で、それから?」
「ん、まあ竜児が助けてくれたのは事実だし、ありがとうって言ってあげたら喜んじゃって。
 口では『おう』ってそれだけだったけど、本物の犬だったら千切れんばかりに尻尾振ってたわね、あれは」
「……前から思ってたんだけどさ、大河ってば高須くんの表情とか的確に理解してるし、ホントによく見てるよねえ……」
「そうかな?そんなこと無いと思うけど……
 それから電車に乗ったんだけどね、ものすごーく混んでて。
 そしたら竜児ってば私を端っこに立たせて、自分はこう、全身でガード!って感じで。
 だけどね、無理にスペース確保してるもんだから自分は身動きとれなくなっちゃって」
「それはまた、大変そうな……」
「でね、そんな竜児の胸元に頬擦りしてあげたら焦っちゃって、もう面白いったら」
「へ、へえ〜……」


「おはよう実乃梨ちゃん」
「おお……おはよ〜あーみん……」
「……なんか妙に疲れてるわね」
「時に言葉ってのは、下手な暴力よりきついものですなあ……」
「何よ。どうしたの?」
「登校途中、延々と……大河に高須くんとのデートの様子を惚気られた……
 いや、話振ったのは私なんだけどさ……」
「……そ、それは……ご愁傷様……」
「砂糖を丼一杯食べさせられたような気分だよ……」




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