「なあ大河、水色のバスタオルどうしたんだ?」
 唐突な竜児の質問に、大河の動きが止まる。
「……なんの話?」
 視線を逸らす大河を、竜児は半目でじっとりと見つめて。
「バレねえと思ったか?だけどな、色が同じのとすり替えても、古いのと新品とじゃ肌触りが違うんだよ」
「だから、それをなんで私に言うのよ?」
「勿論俺じゃねえし、泰子にも確認したけど知らないって言ってたしな。
 となると後そういうことが出来るのは、ここ最近積極的に洗濯を手伝うようになった大河しかいねえじゃねえか」
「…………」
「別に怒ってるわけじゃねえんだよ。ただ、何でなのかが気になってさ」
「……竜児、ごめんなさい」
 急に竜児の方に向き直り、頭を下げる大河。
「お、おい大河?」
「あのね……あのバスタオル、ドジやらかして駄目にしちゃったの……だから……」
「おう、そうだったのか……使い込んだタオルの一枚ぐらい、そこまで気にしなくてもよかったのに」
「ううん、だって完全に私のミスだったんだもの」
「まあ、なんだ。次そんなことがあった時は、捨てる前に俺に見せてくれよ。
 汚れやシミだったら取れるかもしれねえし、破れたりしたとしても雑巾に縫い直すとかで再利用できるしさ」
「うん、わかった」
「悪かったな、責めたてるような言い方しちまって」
「いいの、悪かったのは私の方なんだし」


 さて、実の所そのタオルがどうなったのかというと。

 ベッドの上に広げて、頬ずりするように顔をうずめて、息を吸う。
「ん……竜児の匂い……」

 実は、大河の部屋にあるのです。




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