AM7:00。
 さすがにちょっと早過ぎた。
 見上げた先、木造一戸建て二階の借家で、竜児は朝食を食べている頃だろうか。
 今行けば、久しぶりに竜児の料理を堪能できるだろうが……再会がいきなり食事に乱入というのは、やはりちょっと……
 それに、どうせなら竜児のご飯を楽しむのはきちんとお腹が空いてる時にしたいし。
 というわけで我慢我慢。

 AM7:20。
 もうすぐ竜児に会える。
 最初に何と言おうか?
「竜児、久しぶり」
 ……もうちょっとロマンチックに行きたい。
「竜児……大好き」
 ……天下の往来で言うのはちょっと恥ずかし過ぎる。
「竜児、ただいま」
 ……悪くないが、無難すぎるだろうか?

 AM7:30。
 いつもならば、そろそろ出てくるはずなのだが……
 始業式だし、身支度に時間がかかっているのだろうか?

 AM7:35。
 竜児ではなく、一階から大家が出てきて道路を掃きはじめた。
 見つかって色々聞かれるのも面倒なので、電柱の陰に隠れることにする。
 ……このまま一旦竜児をやりすごして、後から忍び寄って驚かせるというのも面白いかもしれない。

 AM7:40。
 竜児はまだ出てこない。
 ひょっとして、何か用事があって早く出たとか?
 いや、始業式からそれは無いだろう。
 ともかく、復学初日から遅刻は出来ないし、いつまでもこうして待っているわけにもいかない。
 デッドラインまではあと20分。

 AM7:45。
 遅い。あのグズ犬は一体何をしているのか。
 これは、後で何かペナルティを課してやらねばなるまい。
 例えば『好きだ』と百回言うまで許してやらないとか。

 AM7:50。
 階段を駆け降りる足音。
「おはようございまーす!」「わー! 急に声をかけるんじゃないよ!」
 この声、間違いない、竜児だ!
 電柱の陰から飛び出せば、久しぶりに見る竜児の姿。
「大河」
 いきなり名前を呼ばれて心臓が跳ねる。
「おまえは、どんなふうに歩き出す?」 
 あれ?
 竜児は足を止めず、真っ直ぐこっちに歩いてくる。
 ひょっとして私に気づいてない!?
 呆然としている間にその姿はどんどん近づいて――衝撃。
「うぐっ!?」
「ったあ!」





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