「しっかし、この家はあんまり変わってないわねえ」
 ぐるりと部屋を見まわして、大河は嬉しそうに呟く。
「そりゃまあ、一月半……じゃねえ、大河がうちに来るのは三ヶ月ぶりか。まあ、それぐらいでそんなには変わりゃしねえよ」
「うん……ちょっと安心した」
「あ、そうだ大河、和紙の封筒ってまだ持ってるか?あったら一枚分けて欲しいんだけど」
「和紙の?たしか幾つかあったはずだけど……」
「あ、ひょっとして何種類かあるのか?それならさ、その、なんだ……」
「何よ? はっきりしないわね」
「あの、薄桃色の、ほら……ラブレターの時のやつがさ、欲しいんだよ」
「何で?」
「いや、その……」
 妙に言葉を濁しながら竜児が指差して見せるのは、襖に貼られた白い四角形。
 大河の記憶では、そこには桜の花と花びらが舞っていたはずで。
「……ちょっとあんた!これどうしたのよ!?」
「……色々あってさ、その……うっかり破っちまったんだよ」
「うっかりって……あーあ、気に入ってたのに……」
「おう、俺もだ。だから、とりあえず直しはしたけどやっぽり落ち着かなくてさ。けどこのへんじゃ同じ封筒が売ってねえんだよ」
 大河は襖を見ながら顎に手を当てて思案顔。
「そうね……あれならまだ何枚か残ってるけど……何日か待ってくれない?」
「おう、それは構わねえけど……何でだ?」
「今度は忘れずに中身を入れてくるから」


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