小さな包みを手に竜児が席に戻ると、そこには不機嫌顔の大河が待っていた。
「……何貰ったのよ」
「今開ける所だ……おう、チョコレートか」
「今あんた、それ女子から受け取ってたわよね。みのりんというものがありながら、そのツラで浮気?駄犬のくせにお子様らしいったらないわね」
「……ひょっとして、『おこがましい』か? ともかく、ツラは関係無いし浮気でもねえ。
 こいつは、この間手芸部にエコバッグの作り方を教えた、その純然たる礼として貰ったんだよ」
「あらそう。それならまあ、いいわ」
 大河はやっと表情を緩めて、竜児に向けてずいっと手を突き出す。
「……何だよ?」
「ちょうどチョコ食べたいと思ってたのよね。それ頂戴」
「駄目だ。人様の感謝の気持ちの品をほいほいと他人に回すわけにはいかねえだろ」
「……チョコレートって犬には毒だから食べさせちゃいけないのよね。私が全部処分してあげる」
「あいにくと俺は生物学的には人間だ」
「ええい、ごちゃごちゃと……いいからよこしなさい!」
「お前、何で食い物のこととなるとそんなに意地汚いんだよ!」
「うるさいうるさい!こうなったら力ずくで……」


「どうだった?渡せた?」
「うん……」
「やったじゃん!これで顔と名前覚えてもらったはずだし、後はガンガンアタックかけて……」
「それなんだけど……私、やっぱり諦めようと思うの」
「なんで!?高須先輩ってば見た目以外は優良物件じゃん!もったいないよ!」
「だって高須先輩って、『手乗りタイガー』だっけ、あの人とものすごく仲良さそうで……私が割り込む隙間なんて無い観じなんだもの」
「う〜ん、そっか……それじゃ仕方ないかもね……」



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