日曜、午後三時。
「暇ねえ……」
 卓袱台の横に寝っ転がりながら大河。
「おう……」
 つけっぱなしのテレビをぼんやりと眺めながら竜児。
「……」
「……」
「ほんっっっとうに、暇ねえ……」
「そんなにヒマヒマ言うなら泰子について行けばよかったじゃねえか」
「だって、やっちゃんのお買い物って洋服じゃない」
「おう」
「否応無しに再確認させられちゃうのがちょっとね……その、サイズ差とか」
「……おう」
「……」
「……」
「ねえ竜児、今日の晩ご飯何?」
「アサリが絶賛砂抜き中だ。バター炒めにするつもりだけど、酒蒸しやボンゴレスパゲティにもできるぞ」
「……」
「……」
「ねえ竜児、しりとりしない?」
「何だよ急に」
「お題は綺麗な物・可愛い物で制限時間は30秒。パスは不可。で、私が勝ったら晩ご飯のおかずはとんかつに変更」
「俺が勝ったら?」
「そうね……今日のご飯の後片付けを手伝ってあげる」
「ほほう……乗った」

「パ……パ……パ……『パンダ』! 『だ』だぞ大河」
「ち、意外に粘るわね。『ダリア』。ほら、『あ』よ」
「くっ、また花の名前か……なんでそんなもんに詳しいんだ、お前は」
「あら、女子の嗜みってやつよ」
「ちくしょう、考えたらお題の段階で知識量的に男子の俺のほうが不利じゃねえか……」
「今更気づいても後の祭ね。ほらあとじゅ〜う、きゅ〜う、は〜ち……」
「あ……あ……あ……」
「よ〜ん、さ〜ん、に〜い」
「あ……『逢坂大河』!」
「……は?」
「だから、『逢坂大河』で『が』だって、ほら」
「え?ええ?」
「綺麗な物・可愛い物だからOKだろ。人の名前は駄目とも言ってねえしな」
「ちょ、ちょっと、それって……その、つまり……」
「ほらあと10……9……8……」
「ま、待ってってば!」
「パスは不可だろ。3……2……1……0!俺の勝ちだな、大河」
「あ……あ……今の駄目っ!反則っ!」
「何がだよ。ルール違反はしてねえぞ」
「そういう問題じゃないっっ!だって、綺麗、可愛いって……」
「客観的に見てそうなんだからいいじゃねえか。違うって言うのか?」
「そ、それは……その……か、帰るっ!」
「お、おい、大河?なんか顔赤いぞ?風邪とかじゃねえだろうな?」
「う、うるさい!ついてくんなエロ犬っ!」
「エロって何だよ!?」


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