「ふぁ、みふぇひゅうじ」
「……口の中にモノを入れたまま喋るな」
 呆れたように竜児に言われ、大河はおやつのカステラをごっくんと飲み込む。
「見て竜児、変なのやってる」
「おう?」
 大河が指差したのはつけっぱなしのテレビの画面。ワイドショーの1コーナーで、『好きな味噌汁の具ランキング』
「八位ジャガイモ、七位玉ねぎか……俺はこの二つはセットで使うな。少なくともジャガイモ単品のは作ったことがねえ」
「五位が葱だけど、玉ねぎと別なんだ」
「そりゃまあ、味が違うからな。そういや葱もあまり単品では使わないな。大概豆腐やワカメとセットだ」
「でもきのこ類はざっくりと一纏めで六位になってるわよ」
「おう、確かに……どういう基準なんだろう?」
「というか、お味噌汁できのこってなめこ以外にあるの?」
「割高だからあまりやらねえけど、舞茸もけっこう美味いぞ」
「ふ〜ん」
「四位から上はやっぱり定番だな。大根、油揚げ、ワカメ、豆腐か。なめこの時の大根おろしは具として見ていいんだろうか?」
「……知らないわよ」
「しかし、味噌汁の具って単品より二種類ぐらい組み合わせる事の方が多いよな」
「それより問題は小数意見ってやつよ……キャベツと卵ってアリなの?」
「いや、それは悪くないんじゃねえかな。キャベツの切り方や卵を溶かずに落とすか掻き玉にするかとかで違ってくると思うけど」
「ベーコンと玉ねぎ……なんか洋風よね」
「バターを一欠片入れて、ミソスープって所かな」
「素麺……味噌汁の具の範疇を越えてない?」
「というか、それはもうにゅうめんだよな」
「にゅうめんって?」
「暖かい汁で食べる素麺のことだ。今度作ってやる」
「トマト……」
「聞いた事はあるな、旨み成分が豊富だとかなんとか。トマトの酸味が味噌汁と合うのかどうか……」
「キムチは?」
「それは流石に未知の領域だな……」
「……ねえ、竜児はどんなのが好きなの?」
「おう、俺はやっぱり基本の豆腐とワカメかな。作るのに手間もかからねえし」
「簡単だからって理由はあんまり竜児らしくないわね?」
「味噌汁作る時ってのは他のおかずも並行して作ってるからな。手数が少ないにこしたことはねえよ」
「へえ、そんなもんなんだ」
「大河はどれが好きなんだ?」
「ん〜……何でもいいわ」
「何でもって……作る方としては一番困る解答だな」
「だって、竜児が作るお味噌汁は全部美味しいんだもの。だからみんな好きで、何でもいいの」
「お、おう……」



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