五時間目の授業が自習となれば、クラスの大半は友達と駄弁る、雑誌を読む、寝る等々で真面目に勉強しようというのはむしろ少数派で。
 竜児としてはその少数派でありたい所だが、それを許さないのが目の前に一人。
「ねえ竜児、やっぱり晩ご飯はすき焼き食べたい」
「駄目だ」
「すき焼き〜、すき焼き〜、すき焼き〜、すき焼き〜」
「今日は魚の特売日だからサバミソだって言ったじゃねえか」
「竜児だって昨日のテレビ見たじゃない。美味しそうだったじゃない。食べたいじゃない!」
「ああいうのは百グラム千円以上するような高い肉使ってるから美味いんだよ。今のうちの予算で使える肉じゃ、期待外れでがっかりするのがオチだぞ」
「うう〜……それじゃ……せめてお肉!お肉食べなきゃこの衝動が治まらないから!」
「お前なあ……」
「お肉お肉お肉お肉お肉お肉お肉お肉……」
「ああもう、わかったわかった。帰りにスーパー寄るから、安くなってるやつでいいな?」
「わ〜い、竜児ありがと〜!」
「しかたねえ、鯖は明日の弁当に使うか……」
「ほら竜児、四時から豚バラ薄切りがタイムサービスだって!生姜焼き!」
「大河……お前はなんでチラシとか持ってきてるんだよ……まさか最初から!?」
「んん〜?なんのことかしら〜?」



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