同時に料理を口に運び、大河と実乃梨は同じように眉をひそめる。
「……ねえみのりん、どう思う?」
「……ん〜、なんか微妙?」
「というか、ぶっちゃけちょっと不味くない?」
「むう、やっぱり大河もそう思うかね」
「ここ、雑誌で紹介されてたのと同じ店だよね?クリスピークリーミーみたいに名前が似てる別物ってことないよね?」
「そのはずだけど……というか、連れて来たの大河じゃん」
「私だって本で見ただけで、実際に来るの初めてだもん」
「う〜ん、急に客が増えたせいで味が落ちたのか、はたまた最初から提灯記事だったのか……」
「ばかちーに文句言ってやらなきゃいけないわね」
「いや、あーみんは関係ねーべ。同じ雑誌に載ってたってだけで」
「クレームつけてやろうかしらね……『この料理を作ったのは誰だぁっ!』とか言って」
「やめときな。そんなことしてもお金は戻らないだろうし、他のお客さんの迷惑になるし」
「あ〜あ、久しぶりのみのりんとのデートだってのに、ケチついちゃったわね」
「まあ気にすることないさ。それよりこの後のショッピングを楽しもうぜ」
「……そうだみのりん、今日の夜は空いてるの?」
「ん?今夜はこっちに泊まって明日の朝一で帰るから、多少遅くなっても大丈夫だけど?」
「わかった。ちょっと待ってて」
 言って大河は携帯を手に席を立ち、暫ししてから戻ってくると、
「お待たせみのりん。今日買い物の後、うちに来て。竜児が美味しい料理用意しといてくれるって」
「……え?二人の愛の巣においらなんかがお邪魔しちゃっていいのかね?」
「みのりんなら、私も竜児もいつだって大歓迎に決まってるじゃない」
「しかし、新婚でアツアツの二人に水を差しちゃうってのはやっぱりねえ」
「新婚って……確かにそうかもしれないけど、もう半年以上経ってるんだし」
「いやいや、結婚一年目の夫婦は常にラブラブでなくてはならないって法律にもだね」
「どこの法律よ、それは。竜児も待ってるって言ってたから、ね?」
「ん〜……それじゃ、お言葉に甘えさせてもらおうかね」
「よかった。竜児ったら張り切ってたから」
「そんなに?」
「うん、私が今日はご馳走食べてくるって言ってたから、それに張り合っちゃってたみたい。『8時間煮込んだビーフシチューだ』だって」
「……あれ?今は食事は大河が作ってるって言ってなかったっけ?」
「普段はね。だけど休みの日ぐらいは作らせてくれって竜児が」
「う〜ん、高須君らしいというかなんというか……」
「いいストレス解消になってるみたい。その分拘りが凄いことになっちゃって大変だけど」
「それは……本気で凄そうだね?」
「私としては美味しいもの食べられるからいいんだけどね」
「だけど主婦としては、旦那の方が料理が上手いってのは微妙じゃないかね?」
「まあ……ちょっとはね。でも最初からわかってたことだし」
「それもそうか」
「それに、私が美味しいっていうとものすごく嬉しそうなんだもの。『大河に美味い物を食べさせるのが俺の幸せだ』とか言っちゃって」
「……あ、今のでなんだかちょっとお腹一杯の気分」



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