「ってちょっと待った――――!!!」
「「うわ何事!!!?」」
抱き合ったまま、いつしかウトウトと眩ろみかけていた竜児と大河は、突然の声に一気に眠りの園から叩き出された。
「大河ちゃん!竜ちゃん!
……『お手』『おかわり』ときたら、次は『チンチン』でしょう!!!?」
「や、やっちゃん!?」
「ってかお前…なんで押入れから出て来るんだよ!!?」
ガサゴソと、襖を開けて這い出してきた実母(ジャージ姿)に息子は当然の質問を投げかけるが。
「ああもうああもうああもう〜〜〜!!もう二人の甘酸っぱくて青くってジュ〜シィ〜♪なラブっぷりは、それはそれはもうジックリタップリ堪能したんだけどぉ…」
「ずっと覗いてたのか泰子―――!!?」
「でも!でもでも!納得いかないよ!!なんでアゴなの?そこはチンチンでしょチンチン!!
犬といったらチンチンだよチンチン!
りゅうじぃ、チンチン〜〜♪
おうよほら、チンチン〜〜☆
そして、そして、そして二人はあ……いやぁ〜〜んギシギシアンアンアン!!っていうのが鉄板の流れでしょそこは!!!」
「ややややややっちゃん!?」
「お前は息子に何を期待してるんだ!!?」
「初孫」
「即答かよ!!?」
「あ、あ、あのね、やっちゃん…そゆこと言われてもね…まあ、欲しいといえば欲しい…」
「よく言ったわ、大河――――!!」
ガラッ!と狭いベランダのサッシを開けて、更なる闖入者の登場!!
「子供は早いうちに産んでおいた方がいいわ!私も今回のお産は高齢出産で実はかなり大変だったし!!」
「ママ――――!!?」
「大河のお母さん―――!!?…ってそのハシゴは何なんですか!?」
「こっそり侵入するために決まってるじゃない。貴方、低能?」
「うわー全然悪びれないし直接的な表現だあ〜〜…」
「ママ…」
一方で、竜児を貶された大河が臨戦態勢に入っている。
「まあそれはともかく。
竜児君。今後、私のことは義母と書いてお義母さんと呼んでくれて結構!!
それはそれとして……さっきのアレはなに?人の娘に、あんな真似をして…」
「す、すいません!つ、つい、出来心で…ってもしかしてお義母さんも覗いてたんですか!?」
「問答無用!竜児君、あなたあんな不誠実な様でウチの大河を娶ろうだなんて…ハッ!!この軟弱者めが!!」
「ママ…竜児の悪口は許さないからね…」
「そうはいってもね大河。あなただって内心、かなり不満でしょう?
先ほどの青くて未熟で鼻血が出そうな会話の流れの中で、互いの認識の違いはあったかもしれない…
でもね?そこから幾らでも、修正の余地はあった筈。違う?竜児君?」
「は、はあ…」
「不器用ながらも率直な愛情トークからのキスの流れ。そして大河の方はガッツリその気になってるんだから。
――あなた、据え膳に手を出せず下げさせるなんて、男としてあまりにも不甲斐ないでしょう!
そこは一気にいただいてしまいなさい!!むしろそれが礼儀!!!」
「アンタそれでも母親ですか――――――――!!?」
「竜ちゃん、そこはガッツリご馳走になっちゃうところだよ〜〜〜」
「泰子ちょっと黙ってろってかお前もな―――――!!!」
「竜児……私は……いただかれても……むしろ食べてって」
「あー!あー!あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!俺に味方はいないのか――――!!!?」
いません。
<了>
「えええええ!?いやまて、この状況で終わるって――」
「高須さん、互いに初孫の顔をみるために」「ええ、がんばりましょうね〜〜」
「ど、どうしよう、わたし、ううう、…理性と感情の鬩ぎ合い…」
「たいがあ…」
<終了>
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