日曜の街角を、鋭過ぎる視線を振り撒きながら歩く男が一人。
 周囲の人々を引かせまくるその姿は、言うまでもなく高須竜児。
 と、その目の前に、手もあげてないのに止まるタクシーが一台。
 そこから降りて来て軽く片手を上げたのは、
「はろ〜、高須君。相変らず凶悪な顔面してるわね〜」
「おう川嶋、奇遇だな。今日は仕事は無いのか?」
「この売れっ子亜美ちゃんに限ってそんな事あるわけないじゃん。といってももう上がりで、今から帰る所なんだけどね。
 それより高須君こそ一人なんて珍しいじゃない。ひょっとしてタイガーに振られたとか?」
「う〜ん……当たらずとも遠からずってとこだな。大河のお袋さんに急な仕事が入ってさ、弟の面倒を見なきゃいけなくなっちまったとかで」
「へ〜……それじゃ、今日の高須君はフリーなんだ。それじゃあさ、偶には亜美ちゃんと遊ばない?
 あたしならこの辺良く知ってるし、きっとチビ虎とデートするより楽しいよ?」
「あ、いや……そうだ、それならモンサンミシェルって洋菓子店知らねえか?この近くだって聞いたんだけど」
「知ってるけど……亜美ちゃんとしては、まずはもうちょっと盛り上がる所から行きたいな〜。映画とか、ボウリングとか……」
「そうじゃなくてだな、その店に大河と行く予定だったんだけど」
「でもタイガーは来られないんでしょ?」
「おう、だからせめてケーキを買っていってやろうと思って」
「ああ、お土産ってこと。でもそれなら、なおさら最後の方がよくない?」
「いや、だからだな、そこに寄ってから大河の家に行くんだよ」
「……はぁ?ちょっと、意味わかんないんですけど?」
「親父さんも仕事だって話だったからな。大河一人じゃ色々と大変じゃねえか」
「……ひょっとして、最初からタイガーんちに行くつもりだった……とか?」
「おう、それがどうかしたか?」
「……あたし帰る」
「おい、川嶋?店の場所は……」
「知らねーし。知ってても天然鈍感KY野郎なんかに教えてやらねーし」
「お、おい?」
 待たせていたタクシーで立ち去る亜美。一人取り残された竜児は呆然と。
「……俺、なんかマズイこと言ったか?」


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