「なあ大河、お前メイクとかしねえのか?」
「はぁ?」
「いや、川嶋達とか見てるとなんか色々やってるみたいだし……大河はどうなのかと思ってさ」
「ばかちーだぁ?けっ、どうせあんたは胸元でブヨブヨしてる脂肪隗にでも見蕩れてたんでしょこのエロ犬が」
「……お前なあ……」
「ま、正直な所あんまり興味が無いのよね、特に着飾って見せる相手も居なかったし」
「その割に服は随分とひらひらふりふりじゃねえか」
「それは、自分がそういうのが可愛くて好きだからだもの」
「なるほどな……あ、でもさ、今なら北村がいるじゃねえか、見せる相手」
「……それは、考えないでもなかったけどね……知らないのよ、ちゃんとした化粧の仕方」
「え?」
「母親からは教われるような状況じゃなかったし、そういう話をする友達も……居なかったし」
「……すまねえ」
「竜児が謝ることじゃないわよ。……ほら、みのりんだってお化粧にはあんまり縁が無いし」
「お、おう、そういやそうだな」
「そういえば、竜児はどうなの?」
「いや、俺は男だし」
「そうじゃないわよ馬鹿犬。化粧ばっちり決めてるような女の子が好きなのかってこと」
「う〜ん……俺はほら、泰子が化粧でガラっと印象変えるのいつも見てるから」
「やっちゃんってば、普段はどっちかというと可愛い系なのに、お仕事行く前はびしっと『女の人』って感じだもんね……」
「顔の皮の上に色とか乗せただけでどうしてあんなに変われるのか、いまだによくわからねえ……。
 ともかく、あんまり気合入ったメイクされてもさ、その下の素顔とか想像しちまうんじゃないかな……多分」
「それじゃ、すっぴんの方が好みなわけ?」
「どうだろう、別に化粧してるのが嫌いってわけじゃねえから……
 そうだ、旅行の時に大河が薄い色付きのリップしてたじゃねえか。あれぐらいのさりげないのがいいかな」
「ふーん……」


「みのりん、おはよう」
「おっはよう大河!……あれ?」
「何?」
「大河……ひょっとして、そのリップ色付き?珍しいじゃん」
「うん。いつものがちょっと見つからなくて、その代わりよ、代わり」


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