「ただいま〜」
「……竜児、ちょっといい?」
「お、おう?」
 買い物から帰ってきた竜児を出迎えたのは、妙に固い表情の大河。
 卓袱台を挟んで向かい合わせに座り、大河は真剣な顔で竜児を見つめる。
「ねえ竜児、何か私に隠してることない?」
「はあ?」
「隠してることがあるんじゃないかって聞いてるのよ!」
「……特に思い当たる事はねえぞ」
「ふうん……じゃあ、これは何?」
 言って大河が取り出したのは、一冊の本。
 半裸の女性と『お姉さんが教えてア・ゲ・ル♪』等の扇情的なセリフが表紙を飾る、それはどう見ても十八禁なシロモノで。
「……っ!お前、それ……どうして……」
「シャーペンの芯が切れちゃったのよ。で、竜児の借りようと思って引出し探してたら……。
 私という恋人がありながら、どういうことなのかしらねえ?」
「ま、まて大河。それは俺のじゃねえ、春田のだ」
「誰のだろうと一緒よこのエロ犬!」
「違うって、頼まれて買ってきたやつなんだよ。だからその本、袋も開けてなかっただろ」
「は?なんでロン毛虫があんたにエロ本なんかを頼むのよ?」
「それはだな、その、買う時にだな、俺なら私服で行けば年齢確認されねえから。それで、偶にな」
「ふん……ま、いいわ。信じてあげる」
「ほっ……」
「で、こいつはエロ毛虫のだとして……竜児はこーゆーの持ってないわけ?」
「うっ……そ、それは……」
「……持ってるのね……この浮気者!」
「浮気じゃねえ!俺の心は大河一筋だ!」
「じゃあなんで他の女の裸なんて見てるのよ!」
「仕方ねえだろ、男ってのは生理的にある程度、その、処理しないといけねえんだから」
「……それはその、いわゆる……オカズがどうのって……やつ?」
「……お、おう……」
「……それなら……わ……わわ……わた、わたしを見ろ!そして使え〜ぃ!」
「ちょ、ま、待て!おい大河、脱ぐなーっ!」



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