「ねえ竜児、ちょっと肌寒くない?」
「おう、ちょっと待ってろ……。
 ほら、泰子の半纏貸してやるから着とけ」
「ん、ありがと。流石に最近は夜冷えるわよねー」
「おう、もう秋も深いもんな。というか、暦の上じゃもうすぐ冬だぞ」
「秋か……秋……芸術の秋、読書の秋……」
「大河の場合は食欲の秋だろ」
「うるさいわね、やなこと思い出させないでよ。
 そうだ、文化祭では計らずもスポーツの秋を堪能する羽目になったわね」
「スポーツって言えばさ、大河は部活に入らねえのか?」
「はぁ?何で?」
「いや、お前運動神経いいしさ、櫛枝が上手いって言ってたバスケ部とか小中とやってたっていうテニス部とか」
「めんどくさいから嫌」
「おう……一言で切って捨てやがったな……」
「中学までは必須だったからやってたけど、性に合わないのよね、先輩に絶対服従とか勝利の為に根性振り絞ったりとか」
「……なるほど。だけど、ソフト部ならどうだ?櫛枝と一緒ならやりやすいだろうし、北村と共通の話題も出来るぞ」
「……う〜ん……そうね……竜児は、私が部活したほうがいいと思うの?」
「あ、いや、それは……そうだな、そうすると晩飯一緒には食えなくなるよな……買い物の人手も減るし……
 うん、俺としては帰宅部のままでいてくれた方がいいか」
「それじゃ、あんたのためにクラブには入らないでいてあげる。思いやりのあるご主人様に感謝しなさい馬鹿犬」
「おう……ってお前、最初から部活する気無かったじゃねえか」
「あ、バレた?」
「バレたじゃねえよ、まったく……」



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