うだる暑さの中、テレビを見ながら大河がなめているのは四角いアイスバー。
コンビニの袋と共にちゃぶ台に無造作に置かれた袋を見て竜児は格差社会を体感することとなる。
「ガ○ガリ君リッチ……だと……?」
暑い日に嬉しいキンキンシャーベットにリーズナブルプライスを備えた庶民の味方であるガリ○リ君。
その派生商品として登場したリッチ。
通常のガリガリ君の倍近いその価格は節約の鬼である竜児にはとても手が出せない。
それを大河はなんの躊躇も遠慮もなくガリガリしているのだ。
これが育ちの差ってヤツなのか……。
「信じられん……。あ、もしかして大河お前……!」
竜児は冷凍庫から1本の棒状のポリ容器を取り出した。
その中身はオレンジ色で、丁度真ん中にクビレがある独特の形状だ。
「これ、なんだかわかるか?」
「はぁ?」
心底鬱陶しそうに竜児を睨みつけてから、そのブツを見やる大河。
その表情には特に変化も無く
「知らない」
そう言うとまたテレビに視線を戻すのだ。
「マジかよ……」
竜児とってアイスといえば冷凍庫で凍らせるポッキンアイス。
たまにうまく二つに折れないのもご愛嬌。
きっと竜児に限らず、日本人であれば誰しもが幼少期の思い出の品として挙げるであろうアイテム。
それを大河は知らないのだ。
これはなんか、少し寂しいかもしれない。
「よし、今年はお前に庶民の感覚を叩き込む!」
「はぁ? 何言ってんの? バカ犬の分際で」
「まぁまぁ、とりあえずコレ食おうぜ」
「だから何それ?」
「おう、アイスだ。庶民の味方だぞ」
パキッと2つに折ると片方を差し出す竜児に困惑顔の大河。
「まだアイス食べてるんだけど……」
「そういやそうだな」
「ま、まぁ、竜児がどうしてもって言うんなら、仕方ないから食べてあげても……」
「おーい、泰子。アイス食うか?」
「むにゃ……アイス……? 食べる食べる〜!」

そんな午後の昼下がり。




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