「あー、あーつーいー」
テレビを見ながら扇風機を独占している大河は今日も高須家に入り浸っている。
「騒ぐと余計暑くなるぞ」
台所では竜児が夕飯の支度を始めていた。
「っつーか大河、お前んちエアコン付いてるだろ。そっちで涼めばいいじゃねぇか」
「……何?そんなに私に帰って欲しいわけ?」
「そうじゃねぇよ。ここで苦しむよりいいんじゃねぇかってことだ」
「ふん。私んちのリビング、日当たりが良すぎて暑いのよ。昼間からカーテン閉めて暗いのもイヤだし」
「おう、その気持ちはよくわかるぞ。マンションが建つまではそうだったからな、ここも」
うっかり飛び出したお互いの言葉で何か気まずい雰囲気。
大河は口笛を吹こうと努力し、竜児は前髪をいじり倒す。
「なんか、こう、私のせいじゃないのに罪悪感が……」
「悪いな。なんか、気ぃ使わせて……」
「……やっちゃんの布団干しに来てもいいよ?」
「お、おう。それはありがたい。泰子も喜ぶぞ」
「……けど、竜児のはダメ」
「なんでだよ!?」
「だって、竜児の縄張りが広がるじゃない」
「犬のマーキングと一緒にすんな!」


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