「大河ちゃんはゆっくりしていってね〜」
「うん、やっちゃんもお仕事頑張って」
「は〜い、やっちゃん頑張っちゃう!それじゃ竜ちゃん、行ってきま〜す」
「おう、気をつけてな、泰子」

「だけど、前よりマシとはいえやっちゃんも大変よね、土日も仕事なんて。GWも忙しかったんでしょ?」
「まあ、客商売だからな。このご時勢ではむしろありがたい話だ」
「仕事か……竜児は将来の仕事とか考えてるわけ?」
「そりゃまあ多少はな。まだ漠然とだけど」
「ふ〜ん……やっぱり安定性を考えるなら公務員かな、とか?」
「それも悪くねえかもしれねえけど……一応国立選抜の身で最初っからそこ狙いってのもちょっとな」
「じゃあ普通に会社員?竜児の場合営業には少し問題があるわよねー。顔とか」
「うるせえ、ほっとけ」
「数字には強いし几帳面だし、事務や経理なんかは向いてるかもね」
「あ、でも最近はそういうのってパソコン必須だろ。俺あんまり扱ったことねえし、しばらくは買う余裕もねえぞ」
「それなら私のノートで練習させてあげるわよ」
「まあそれはそれとして、せっかく理系なんだし研究や開発ってのも有りだよな」
「研究って、薄暗い部屋でフラスコやビーカーの怪しい色の液体混ぜ合わせてるイメージしか……」
「……それは偏見だろ」
「当然あんたは白衣で、なぜか下から照明が当たってるのよね。時々窓の外で雷が光ったりして」
「おい大河」
「マッドサイエンティストそのものの笑みで『くくく……ついに完成だ』とか言っちゃったりして。でもって実は造ってるのは画期的な新しいダシの素だったりするの。ぷくく……」
「お前なあ……あ、出汁って言えば、料理関係にもちょっと憧れるんだよな」
「レストランとか?」
「いや、もっと庶民的な……食堂とか定食屋とか。厳選とまではいかねえけどそれなりに拘った食材で、値段はあくまでリーズナブル。
 日替わりランチを二種類……いや、三種類。ごはんも白米と玄米を選べるようにして」
「でもって近所からヤクザの店と思われて閑古鳥、と」
「……い、いや、一度食ってもらえばわかる、はずだ!」
「怖がって近寄らないんじゃその最初の一回も無いわよねー」
「……大河」
「ま、安心して。その時は私が看板娘なウェイトレスになってあげるから」
「いや、大河だとドジやらかして割る食器の数が凄いことになりそうだしな……それに自分の店持つためにはそれなりに貯金と時間が必要だし、その頃の年齢だと看板『娘』ってのは……」
「うう、うるさいわね」
「そういや大河はどうなんだよ、将来の仕事」
「そうね……文系だから事務関係でもいいけど、英語得意だし通訳とか翻訳とか?
 ま、なんにせよその先が決まってるけどね、私の場合」
「おう、何だ?」
「勿論竜児の所に永久就職に決まってるじゃないの」
「お、おう……」



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