「おう、こいつはなかなかいいな」
 特売品の南瓜は手にするとずっしりと重い感触。
「天ぷらにするか、煮物にするか……いっそのこと挽肉とか詰めて丸ごと蒸すってのもありか。なあ大河、お前は……」
 振り返った竜児の前に、呼びかけた相手の姿は無くて。
「……あー……」
 大河が母親の元に去ってから、何回今のようなことを繰り返しただろうか。家に居る時、どうにも落ち着かなくて困ることも。
「……さて、今日はこんなもんか」
 竜児はぽりぽりと頭を掻きながらレジへと向かう。


「なあ大河、実は南瓜の旬ってのは夏から秋ぐらいなんだよ。それがどうして冬至に食べるものになってるか、知ってるか?」
 暮れなずむ町を、エコバッグを手に一人歩きながら、竜児は問いかける。
「皮が厚くて保存性が高いってのもあるけど、収穫してからある程度経ってからの方が熟して甘味が増すんだってさ」
 遠い空の彼方に、あの星の下に届くように。
「……うん、やっぱり半分は煮物だな。残り半分はニョッキに挑戦してみるか」
 他にも色々と新しいメニューを身につけよう。
 そして、大河が帰ってきた時に並べて驚かせてやるのだ。


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