「竜児ー?」
「おう、なんだ?」
「まだ7月になったばっかりだってのに、なんでこんなに暑いわけ?」

温暖化ヤバイんじゃない? なんて言いつつ扇風機の前で半ばグロッキーな大河。
最近はあまりの暑さにいつものモコモコフワフワな服も夏季休業。
デニムのショートパンツにキャミソールという薄着でスライムの如く溶けかけている。

「ほら、麦茶だ。氷もガッツリ入れたぞ。これ飲んでもう少し頑張れ」

テーブルにコースターと共にグラスを置く竜児。
こちらも汗を流しつつ、Tシャツにハーフパンツという完全猛暑仕様。
高須家のクーラーは全開で稼働しているが、いかんせん出力がヘボい。
冷媒が抜けてしまっているのではないかと疑いたくなる程度の冷風しか出てこないのだ。
それを押入れっから引っ張り出してきた扇風機で循環させているわけなのだが、どうにも暑い。
額を流れる汗を拭いながらグラスを煽る竜児。それに続けと言わんばかりに煽る大河。

「ぷは〜っ」
「ふぁーっ」

氷でキンキンに冷やされた麦茶を一気に飲み干した二人は同時にグラスをカンッとテーブルに戻す。
すかさず竜児は並んだ二つのグラスに麦茶を注ぐ。
グラスが濃い琥珀色に満たされたところで再び大河がグラスを煽る。
汗ばんで上気した頬に、扇風機でなびく前髪。ダラダラに結露したグラスを握る細い指に、覗く首筋。
本当にとろけるわーと、キャミソールの胸元をパタパタして風を送る大河。
竜児とってはこんなの日常的な光景であるハズなのに、何かすごく妖艶な気がして思わず目を逸らす。
そんな竜児の視線の動きを偶然にも見つけた大河は、面白いオモチャを見つけた子どものような笑みで竜児ににじり寄る。

「な、なんだよ?」
「あんた、なんか良からぬこと考えてたでしょ?」

上体をひねり、床に両手をついて下から覗き込む大河。その視線から、必死に逃れようとそっぽを向く竜児は赤面。
それを認めた大河は某腹黒天使のように口元を釣り上げ、竜児の首に腕を回す。

「この……エロ犬!」

「ちっ、違うって!」
「何が違うのよ。 私のこと見て欲情してたくせに」
「……お、お前が珍しく薄着で来るからだぞ」
「じゃあ厚着がよかった?」
「そうじゃねぇけどよ……」
「竜児も素直じゃないなー。私はいいんだよ?」
「大河……!」

ギシギシアンアン



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