『竜児ーっ!』
「おうっ!?」
 突然響いた声に飛び起きる竜児。
「竜児ー、起きてるー?」
 遠慮のカケラも無く襖を開けたのは、言うまでもなく逢坂大河。
「た、大河、お前どうして……」
「あら、恋人の訪問がそんなに不満?」
「そうじゃねえけど……今日は風邪ひいて熱があるからって電話で言ったじゃねえか」
「だからこそ看病してあげに来たのよ。思ってたより調子よさそうみたいだけど」
「おう、熱も37度ちょっとだしな。だから、そこまでしてもらわなくても……」
「でもまあ、せっかく来たんだし。それに、ずっとこんな機会を待ってたのよね」
「待ってたって……何だよ?」
「私ってば竜児に散々面倒見てもらってたわけじゃない。だから、今度は私がお世話し返してあげるのよ」
「し返すって……世話なら去年の終わりにしてもらったじゃねえか。インフルエンザで入院してる間」
「あの時はほら、あんまり楽しんでいられる状況でもなかったから」
「楽しむって、お前なあ……」
「ま、安心して泥舟にのったつもりで任せておきなさいって」
「言い得て妙な間違いだな……正直不安しかねえぞ」
「大丈夫だってば!掃除や洗濯には手を出さないし、ご飯はレトルトのおかゆとか持ってきたから」
「おう、それならまあ……」
「さて、それじゃ……看護の定番といえば、『お風呂に入れないから体を拭いてあげる』よね!」
「は? まだ昼前だぞ?」
「でも寝汗とかかいてるだろうし、ほら、脱いで脱いで」
「待てって!お前、俺の、その、黒乳首嫌いじゃなかったのかよ!」
「だ〜いじょうぶ、竜児の乳首ならどんなに黒くても愛せると思うから」
「こ、こら、シャツを引っ張るな!伸びる!破れる!」
「無駄な抵抗はやめて、病人はおとなしく言う事をききなさい。うふふっ、ふふっ、ふふふふっ」
「息を荒くするなっ!てか大河、お前なんか目が怖いぞ!?」



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