「あーいいお天気!毎日こんなふうにいいお天気だったらいいのに。ね、竜児。お弁当のおかず何?肉?何肉?」

ゴールデンウィーク明けの初日。竜児と大河は久々の通学路を並んで歩く。さわやかない色合いの空に加えて、空気も新緑の香をはらんで、一年で一番さわやかな季節であることを思い出させる。

「朝から何なんだよおまえは。今日は塩じゃけにきんぴらごぼう。それからホウレンソウのおひたしだ」
「『何なんだよ』って、何よ。おかずを聞いちゃいけないって法律でもできたの?あと、塩じゃけってお肉じゃないじゃない」
「さっき俺んちで朝飯食ったばっかりで、いきなり昼飯の話かよ。それに塩じゃけは動物性たんぱく質だ」
「朝ご飯は朝ご飯、昼ご飯は昼ご飯よ。私はご飯のことはちゃんと知っておきたいの。喜びなさい、あんたは駄犬だけど料理の腕前だけは私が認めてあげてるんだから。
それからたんぱく質だろうが魚は魚よ。お肉とは認めない。いいこと?明日からは必ず肉を入れるのよ。具体的には豚か牛」
「はいはい、認めていただいて光栄です。まぁ、料理の腕はともかく、お前が鶏を肉と認めないなら、それでもかまわねぇけどな。お前の弁当、一生鶏抜きな。唐揚げの脂の乗った皮の裏側を食えねぇとは、お前もかわいそうな奴だぜ」
「なんてひどいこと!あ、みのりーん!」

目付きの悪い少年を従えて歩く小柄な美少女。いつも通りの凸凹コンビ。さわやかな風に心浮き立てて、ついつい気を抜いたか、これからたった一時間後、恐怖の転校生が二人の目の前に現れるなど想像もしていない。

いい色に日焼けした少女と合流した二人は、つかの間の平穏を楽しみながらいつもの通学路を元気に歩いていく。

(おしまい)


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