「うえ〜……」
 聞こえた妙な声に竜児が広げたテキストから目を上げれば、グラスを手に眉根を寄せてべえと舌を出す大河。
「大河、どうした?」
「ドリンクバーでオリジナルブレンド作ってみたら失敗した……」
「……残すなよ、MOTTAINAI」
「竜児のはコーラだったわよね。こっちと取り替えてくれない?」
「残すなよ、MOTTAINAI」
「今なら特典として私との間接キスがついてくるわよ?」
「今更その程度で俺が釣られると思うか?」
「なによ、直接キスしろっていうの? あんた、場所ってものをわきまえなさいよね、まったくエロ犬なんだから」
「何でそうなる!?」
「まあ竜児がどうしてもしたいって言うなら、私としても、や、やぶさかではないけど……」
「しねえって!頬を赤らめるな!」
 とそこへ、トレイを手に歩み寄る一つの影。
「はいは〜い、イチャイチャパラダイス中すいませんがお二人さん、ちょ〜っと失礼しますよ〜」
「イチャイチャじゃねえ……っておい櫛枝、それ……?」
「ん?見ての通りのヨーグルトパフェ・大河スペシャルだけど?」
「……おい大河、お前いつの間に注文したんだよ?」
「さっき竜児がトイレ行った隙に」
「食べる物は宿題が一段落してからだって言ったじゃねえか」
「勉強で頭使う時は脳のエネルギー補給に甘いもの食べた方がいいのよ」
「パフェ食いながら勉強はできねえだろ。それに、大河はそーゆーもん食うと必ずこぼすじゃねえか」
「そんないつもいつもはこぼさないわよ」
「いーや、俺の見た所、お前は九割以上の確率でこぼす」
「何よ、あんたいちいちチェックしては統計とってたわけ?まさか自分の恋人がそんな偏執狂だとは思わなかったわー」
「まあまあ大河も高須くんもそのぐらいで。せっかくのお勉強デートなんだし」
「……いやいやみのりん、今日は別にデートじゃないのよ」
「へ?そうなの?」
「うちのエアコンがいかれちまってさ、さすがに昼間の暑さはきついんで避難してきたってわけだ」
「そうなんだ、私てっきり……でもまあ……っと、いけねえいけねえ、仕事中だったぜ。
 それじゃおいらは退散するとしますか。ふわふわ時間(タイム)の邪魔しちまって悪かったね、あでゅ〜!」
「ふわふわでもねえ……って、行っちまった」
「……ねえ竜児、私達デート中に見えるのかしら?」
「う〜ん、まあ……そう見られても不思議じゃねえかな」
「ねえ竜児」
「おう?」
「そっち……隣に行ってもいい?」
「……おう」



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