「大河……お前ひょっとして初めてか?」
「な、何を根拠にそんなこと……」
「見てりゃわかるって」
「そう言う竜児はどうなのよ?」
「俺は二回目だ」
「むう、竜児のくせに生意気な」
「まあ小学校以来だから、ずいぶん久しぶりなんだけどな。しかし、大河なら慣れてるんじゃねえかと思ってたんだが……」
「うちはほら、連れてきてくれるような親じゃなかったから……遊園地なんて」


「で、初めてのメリーゴーランドはどうだった?」
「ま、同じ所ぐるぐる回るだけにしてはなかなかだったわね」
「なかなか、ねえ……」
「何よ、そのニヤケ面は」
「いや、そのわりには楽しそうだったな〜、と……ほら、見てみろよ」
「ちょ、ちょっと、いつの間に写メなんて撮ったのよ!」

「うう、気持ち悪ぃ……」
「なによ竜児、情けないわね」
「大河が調子に乗って回しまくったからだろうが。コーヒーカップは高速回転を楽しむもんじゃねえぞ」

「ふはははは!何人たりとも私の前は走らせないわよー!」
「おい大河、あんまりスピード出しすぎると……」
「ひゃー!?」
「やっぱりカーブ曲がりきれなかったか……言わんこっちゃねえ」

「なかなかに奇妙な感じね、ミラーハウスってのは……」
「だな。こういう迷路は右手なり左手なりを壁につけて歩けば……」
「ねえ竜児、この鏡に映ってるのってどの辺まで見えてるのかしら?」
「ん?そうだな、反射繰り返してるっていってもそれほど遠くまでは見えねえと思うけど」
「それなら、他の客が竜児の姿でここをお化け屋敷と勘違いする心配は無さそうね」

「さあ、いよいよメインイベントのジェットコースターに行くわよ!」
「う〜ん……」
「なに心配そうな顔してるのよ。まさか怖いとか言うんじゃないでしょうね?」
「いや、ああいうのって身長制限があるだろ?大河がそれに引っ掛かるんんじゃねえかと……」
「ンなわけあるかこの馬鹿犬っ!」

「うわー……思ってたより高いのね、ここの観覧車」
「おう、いい眺めだな」
「ねえ竜児」
「おう?」
「今日は楽しかった。ありがとね」
「おう、俺も楽しかったぞ。また来ような」
「ん。それでね、やっぱりこーゆーデートは〆が大事だと思うのよ」
「おう?」
「もうちょっとで天辺でしょ、そしたら……ね?」
「……隣にも人がいるんだぞ」
「気づきゃしないわよ。ほら、もうすぐだから」
「……おう」
 そして、ゴンドラの中で二つの影が重なって。




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