Third Year Stage episode1

プロローグ

父と娘、兄と妹などの疑似家族関係。友達。アパートとマンションの部屋が向かい合ったお隣さん。飼い主と犬の主従関係。片想いの相手の親友同士。そんな竜と虎の間を隔てていた最初のころは緩衝材であり、
後に悲劇を生んだベルリンの壁と化してしまった関係を己の全てを懸けぶち壊し、婚約し。自分たちの世界の「大破壊」を防ぎ、「劇団春田」の力を借り、
学校から大々的にエスケープをかまして「みんな幸せ」になるため産まれて17年間あったことのない祖父母の家へ転がり込み時計の歯車を再び回すことに成功。
そして大河が母親のもとへ帰り…
1ヵ月半後の朝に大橋の地に戻ってきた大河と再開し、物語は再び始まる。



第1章



「私が学校に行ったらみんな驚くね。誰にもまだ言ってないんだ。みのりんにもばかちーにも北村君にも。」
「驚かせてやろうぜ。−行こう!本気で遅刻だこのままじゃ!」
「うん!」
どちらからともなく手をつなぎいつもの欅並木へと2人は手をつなぎ走り出す…
「ところで竜児…」
「おう!?なんだ?」
「クラス替えってどうなるのかしら?じ、自分で言うのも難だけど、そ、その…こ、こ、ここ、恋人同士になった訳じゃない?折角なら一緒のほうがいいし…」
そういえば…と思い出す。この隣にいる大橋高最強の凶暴さと美しさ?(腹黒いが素はいい奴で相方の虎にちょっかいを出してくるやつがいるため)を兼ね備えた虎と駆け落ちした後が大変だった。
(未だに結婚できないが教師としては最高の)独神のおかげで駆け落ち騒動の罰は反省文と掃除だけで済んだのだが、
やはり申し訳なさと大河がいない寂しさとでいっぱいでそんなことを考える余裕は竜児にはなかったのだ。
「おう。はっきり言ってそんなことを考える余裕がなかった…。確かにお前と一緒にいたいしな…。多分文系理系で分けるんじゃないのか?下手したら別々のクラスだな。まあ学校に行ってみるしかないだろ。」
「ええっ、嫌だよう。竜児といたい…。」
「そんなこと言われても仕方ないだろ…。向こうの都合なんだから…。」
「ぶう〜。」
そしてこの竜と虎の馬鹿ップルが頭上に疑問符を浮かべることになるのはそれから間もなくだった。


          * * *

「はあはあ…、まさか3年生の朝っぱらから全力ダッシュとは…」
「はあはあ…、竜児それよりクラス分け…」
「おう…」

ギリギリ10分前で間に合った2人は息を整えてから玄関前に出されたホワイトボードに貼り付けられたクラス分け発表の紙を見た。
(一人は凶悪にギラついた眼で「もし大河と一緒のクラスじゃなかったら、クラス分けした先公をコンクリ詰めにして東京湾に沈め、この学校を焼き払ってやる…。」
 と考えているように他の人から見えるが、実際は「まあ、できれば大河と一緒のほうがいいな。あいつのドジのフォローをしやすいし。」と考えて。
もう一方はキラキラと瞳を透き通らせて。)

「えーと3−Aに高須はない。」
「私も…。」
「続いて3−Bっと…、2人の名前はここにもないな。」
「そう。」
「んじゃ次、3−C。ここは…。逢坂、逢坂お、あったあった。で高須は…、か行で香椎は大河とまた一緒、おう川嶋もか!じゃれあいが…、まあいい。
 で、北村も大河と一緒、木原もか…、どうでもいいが男子がうるさそうだな…これは。で、おう!!よかったな大河?櫛枝とも一緒だぞ。」
「ねえ竜児…これよ〜く見て、去年と変わってないわよ、ちゃんと竜児の名前もあるし」
「おう!!なぜだ?なぜなんだ?能登も春田も他の人も変わってねえぞ!!どうして!?」
「ねえ、竜児。時間が…」
「だ〜〜、やっべえ急ぐぞ大河!!」
くそ、本当に俺たちが本物の龍と虎ならもっと早く学校に着いたのに!!と勝手に妄想しながら教室に入るとそこには変わらずの面子がいた。

「おはよう高須、逢坂。いや〜クラス替えのプリントを見たら2-Cの面子だけでな、それに逢坂の名前も書いてあったからびっくりしたよ。」
「おう。ってことは会長のお前でもクラス替えの真相は不明ってことか。」
「お〜う大河〜久しぶり〜、戻ってきてたんだね〜。プリント見たら大河の名前が書いてあったからさ〜、びっくりしたよ〜。」
「みのり〜ん。もどってきたよ〜。でも、なんでクラスのメンバー変わってないんだろう?」

相変わらずの仲でまあ何よりだ…。


「おはよう高・須・君」
「おい川嶋、背中に柔らかいm…」
「な〜に朝から発情しとんじゃ〜い。バカチワワ。」

相変わらずパワー、瞬発力共に劣っていないことを確認、多分大河の地雷を踏んだら今までと変わらずアウトだな…
しかし川嶋も慣れたもので寸前のところで避けた。

「やるわね、ばかちー。」
「ちびとらも相変わらず身体が鈍ってないみたいね…。」

これ以上放っておくとどうなるかは2年の時によ〜く判っているので止めに入る。

「お〜い、おまえらやめとけって。」
「いいじゃない、別に、ばかちーと竜児をめぐって戦うのはもはや日課だし。」
「そうそう、それにちびとらとじゃれないと退屈なのよね。」
「あのなあ…。大河、頼むから変な日課は作るな。」

なるほど、これが「女の友情」というものか…。なんて思っていると、担任であり恩師でもあった只今絶好調三十路線まっしぐら、行先は独身(独神)の恋ヶ窪ゆり先生が入ってきた。

「はーい、みなさん座って〜。」と言われたためとりあえず席に着く。

「みなさん座りましたね?今年度も旧2-Cの3-Cを担当する恋ヶ窪ゆりです。間違えても『独神(30)』とか言わないでくださいね〜、
 中の人はリアルに30歳ですが心はピチピチの20代ですから…、言った方は英語の成績下げた上で、暗殺拳使ってお仕置きしますので…。
 なにか質問ある方は?」

と先生が言った直後でクラス全員が手を挙げた。

「え〜と、とりあえず生徒会長の北村君からでいいかしら?」
「先生、多分クラス全員が疑問に思っていると思いますが、なんでクラスが2-Cの時と変わっていないんですか?」

おお、さすが大先生。とクラス全員が思った。

「ああ、その件ですか。実は去年の3年生まではクラス替えをしていましたが、
今年度から『環境が変わると受験に集中できない』という事で、2年のクラスメンバー並びに担任も変えないという方針になったためです。
(いえない、子供たちにはいえない。あの人から圧力をかけられてなんて。)」
「え〜と、もうひとつ質問なんですが、その方針はいつごろ決まったんですか?」
「去年度の3月末かしら?他に質問はありませんか?」

おい、それはいくら何でもギリギリすぎるだろ…。
と、思ったがとりあえずいい事にする。
そのおかげで大河と一緒にいられるのだから。
それにこの後は楽しい楽しい時間が俺を待っている…。


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