数日後、昼休みの教室にて

「た・か・す・くーーーん!!!たいがーー!!!」
「あれ、みのりん一緒に食べる?」「どうしたんだ櫛枝、そんなに血相変えて」
「どうしたもこうしたもないよ!コレはどういうことさ!」

そう言って見せられた写真は何やら鍋の中で白っぽい茶色に濁って泡立った謎の液体。
何かよく分からない黒い粒やふにゃふにゃの黄色い謎の物体が浮かんでいて、
分類するならグロ画像、とても食事中に見るようなシロモノではなく・・・

「ちょっとみのりん(櫛枝)!、ご飯の最中になんてもの見せるのよ(んだ)・・・!」

「おー、さすが息ピッタリだねぇお二人さん、じゃなくて・・・大河!
こないだあんたから聞いた高須君の特製カレーの材料の通りに作ったらこうなったんだよ!どういうことなのさ!」
「え・・・・、そうなの?ちょっと竜児、これはどういうこと?説明してもらえるかしら?」

「大河、お前あんなデタラメ教えたのかよ!櫛枝も信じるなよ、お前の家事のセンスは一目置いてたのに、
お前ら二人揃ってアホか!ってか最後まで作れたのが逆にすげえよ、途中でおかしいことに気付くだろう、普通は!」

「私が春田君並ってどういうことさ!高須君のレシピだからおかしいと思いながら信じて作ったのに!」

「・・・ねぇみのりん。どうやらこの犬は人を騙した挙句アホ呼ばわりまでしてくれたみたいだよ。」
「・・・そのようだね、大河。」
「これはどうやらシメなきゃならないようね、みのりん。」
「うん、責任取ってもらうしかないね、これは。」


その日竜児の弁当は二人に食べつくされ、さらに放課後「昼も食べないで腹が減ってるだろう」などと言われながら
櫛枝家まで連行され、例の写真の物体を食べさせられる羽目になったのである。
竜児はかつて憧れた女子の家にこのような形で訪れることになろうとは思いもしなかったことだろう。



「な、なにこの臭い・・・、ものすごく遺憾な感じがするわ・・・。」
「く、櫛枝・・・、俺はこれを食わなきゃならんのか・・・?」
「あったりまえさね、私はともかく大河を騙した罪は重いんだよ!さあ食え!」

観念して一口食した竜児だったが、甘いのやら塩辛いのやらが混ざった上わけのわからない味と臭気で意識が飛びそうになり、

「・・・・すまん、もう無理・・・、一口食べたしこれで許してくれ・・・。人間の食いもんとは思えねぇ・・・。」

「んー、そうだねー、こうしよう。本物のレシピを私と大河に教えてくれたら許してあげることにする。大河もそれでいいよね?」
「うん、っていうか最初からそれが聞きたかっただけなんだけどね。私もみのりんも。」
「お前ら・・・、それなら最初からそう言えよ。」

「いやー、ごめんね高須くん。でもやっぱ大河にウソついた分はお仕置きしとかないと、ねぇ?」

「そりゃ悪かった。あんなにあっさり信じるとは思わなかったんだよ。しかもさっさと行っちまいやがって。
そんじゃレシピ書いてくるから明日まで待ってくれな。」

ちなみに翌日竜児によって書かれたそのレシピは、元の大河用の甘口に実乃梨の好みに合わせた辛口版を追加され、
さらにスポーツ少女の彼女のために栄養価を考えてアレンジを施されたものであったが、
後にそのカレーは実乃梨によってソフトボール日本代表チームにもたらされ、
チームの名物メニューとして受け継がれていくことになる。


「やったね!今度挑戦してみようっと。それはそうと竜児、みのりんの手料理食べたんだから私のも食べてくれるわよね?
おにぎり以外にも得意料理あるんだから。」

「お、大河の得意料理とな。おっちゃんも興味あるねぇ。なんだいなんだい?」

「お味噌汁。」

『み・・・みそしる・・?。』

「何よ、二人して固まっちゃって、不満だっての?たかが味噌汁で悪かったわね!ひどいよみのりんまで!」
「い、いや違うぞ大河。その・・・、嬉しくて。なぁ櫛枝、ってお前なにハァハァしてんだよ。」

「だって・・・ハァハァ・・・あの大河が毎朝・・・ハァハァ・・・『今日のお味噌汁はどう?おいしい?』
・・・なんて、可愛すぎるじゃないのさ、・・・なにその理想の嫁は・・・って鼻血出てきた・・・」
「お前興奮しすぎだ!ティッシュ使え!ってまあ大河、そういうわけだ。
味噌汁のうまい妻というのは日本人男性の理想の一つであってだな、お前がそうなってくれるならすごく嬉しい。」

「理想の嫁・・・ホントに?」
「ああ。」
「私も大河の味噌汁飲みたいけど、やっぱ最初は高須君に譲らないとね。そのうち頼むね?」

「うん、わかった!味のほうもママのお墨付きだから大丈夫よ!」
「おう、そりゃ楽しみにしてるぜ!」

END


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