「ねえ竜児、これどう思う?」
 言いながら大河が目の前に突きつけてきたのは、通販雑誌の1ページ。
「おう……アニマルスリッパ? 悪くないと思うが、お前こういう子供っぽいやつあんまり好きじゃないんじゃなかったか?」
「私のじゃないわよグズ犬。みのりんの誕生日プレゼントなの!」
「おう、そうなのか。櫛枝の……」
 先ほど一瞬鼓膜を震わせて消えた言葉、その意味が竜児の脳に浸透するまで数秒。
「……た……たんじょう、び?」
「……何でブサ鳥みたいな言い方するのよ」
「誕生日っていうとあれだよな、バースデイだよな」
「それ以外の何だって言うのよ」
「誕生日……櫛枝の……おう……おうおうおうおう……」
「ちょっと、竜児?」
「そ、そうだよな、誕生日といえばプレゼントだよな、あげても不自然じゃねえよな。ああでも何贈ったらいいんだ?女子の好みなんてわからねえぞ?そもそもいつどうやって渡せばいいんだ?」
「戻ってこんかこの馬鹿犬ーっ!!」
 ばちこぉーん!!「おぶぅっ!!」
 大河のビンタ(と呼ぶにはあまりに重い一撃)を食らって竜児の体はくるりと一回転。
「お……おう、すまねえ、ちょっと錯乱してたみてえだ」
「まったく、あんたは……」
「えっとだな、念の為に一応確認してえんだが……もうじき櫛枝の誕生日なんだな?」
「そうよ」
「その、誕生会とか、するのか?」
「小学生じゃないんだから……ちょうどみのりんの部活もバイトも休みだから、一緒にごはん食べてプレゼントあげるぐらいよ」
「おう、そうなのか……なあ大河、頼みがあるんだが」
「嫌」
「……大河……」
「……ああもう、わかったわよ。ついでだし、代りにプレゼント渡すぐらいはしてあげる。だけど何あげるかは自分で考えなさいよ」
「さっきお前、俺に相談を……」
「それとこれとは別」
「この間、北村に何あげたら喜ぶかって……」
「うるさい黙れハゲろ」
「おう……そうすると何がいいかな……予算の都合もあるし……」
「……ねえ竜児」
「おう?」
「私の誕生日も近いって言ったらどうする?」
「おう、そうなのか、早く言えよ。まずはケーキの材料揃えとかないとな。その日の夕食はトンカツ……いや、いっそのこと奮発してステーキにするか?
 大河がいつも欲しがってるような服やバッグは俺にはちょっと高いからな……プレゼントは手作りの小物とかになると思うけどそれでもいいか?」
「……ん、いい」
「おう、それじゃ何作るか考えないとな。リクエストはあるか?」
「そうじゃなくて、本当は誕生日はまだ先だから、いいの」
「……は? じゃあ何で近いなんて?」
「ちょっと聞いてみたくなったの、それだけ!」
「……???」



作品一覧ページに戻る   TOPにもどる

inserted by FC2 system