「……おい大河」
「んー?」
 渋い顔の竜児に、大河が返すのは生返事。その視線はゲーム画面から動かずに。
「とっくに0時過ぎてるんだし、いいかげんに帰って寝ろよ」
「ん、キリのいい所まで終わってからね」
「キリのいいって……どこだよ?」
「魔王倒したら」
「クリアしたらじゃねーか、それ」
「うるさいわねー。少しぐらい遅くなってもいいじゃない、夏休みなんだし」
 一度も振り返らずに答える大河に、竜児は溜息を一つ吐くと立ち上がって台所へ。

「ん?」
 漂ってきたいい匂いに思わず手を止める大河。
 身をひねって台所を見れば、何やら調理中の竜児が。
「竜児ー、何作ってるのー?」
「おう、小腹がすいちまったんでな、夜食にきのこスパを」
「私も食べるー」
「おう? うーん……」
「なによ、何か文句でもあるっていうの?」
「いや、文句ってわけじゃねえけど、大河はゲームの途中なんだろ? せっかく作ったもんをながらで食われるのは流石にちょっとな……」
「はぁ?そんなことするわけないじゃない。待ってなさいよ今セーブするから」
「おう、そうかそうか。それじゃゲームも中断したことだし、食い終ったら帰れよな」
「……竜児、あんたまさか……」
「おう、何だ?」
「……なんでもない。いいからさっさと私の分作りなさいよ!」
「おう、実はもうできてる」
「!……やっぱり、最初から……」
「ほら、早く食わないと冷めちまうぞ」
「……つ、次はこうはいかないからね!」




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