「み、みのりん……それはさすがに恥ずかし過ぎると思うの」
「うん、私も自分で言っててそう思った」
「でしょでしょ。だから別の方法を……」
「大河……せっかく高須くんと一緒に暮らし始めて最初のバレンタインなんだよ?ここで愛情アピールしないでどうするのさ」
「……それはやっぱり普通に手作りとかで……」
「家にいる時間あんまり違わないんでしょ?目の前で作ってたらサプライズにならないじゃん。隙見て作っても残り香でバレバレになるし」
「う……それはそうだけど……」
「確かに恥ずかしいだろうけどさ、高須くんのためにそれを乗り越えることこそ愛じゃないのかね?」
「……うん、そうだよね……私、頑張ってみる!」
「健闘を祈るぜー! ところでさ、大河」
「何?」
「高須くんのホワイトデーのお返しをキャンディにしてもらってさ、同じ方法で……」
「ひ、ひやゃゃ」


「りゅ、竜児、あのね」
「おう?」
「こ、これ……」
 言いながら大河が取り出したのは、一口チョコの特用袋。
「……ひょっとして、バレンタインか?」
「うん」
「……おう、ありがとな」
 微笑んで応えながら竜児は、やはり少しがっかりした様子で。
「それでね、今からあ、愛情込めるから、ちょっと目をつぶっててくれない?」
「おう?わかった」
 言われるままに目を閉じた竜児の前で大河はチョコを一つ取り出し、自分の唇で咥え、そのまま竜児の唇に押しつける。
「!」
 舌先でチョコを竜児の口中へ押し込んで、転がしながら溶けた部分を塗り広げるように。
「ん…………む…………」
 竜児が離れないように首筋にぎゅっと抱きついて、チョコの味が完全にしなくなるまで。
「………………ぷはっ……た、大河……お前……」
「えと……竜児、嫌だった?」
「いや、びっくりしただけで……嫌じゃねえけど……」
「よかった……それじゃ、2個目いくわね?」



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