「はあぁ〜〜……」
 荷物を置いて自分の部屋から出てきた竜児が目にしたのは、憂鬱げな表情で長々と溜息をつく大河の姿。
「大河、どうした?」
「体育祭よ、体育祭。今年は竜児とクラス違うから、チームも別々になっちゃうじゃない」
「おう、そうだな……俺も大河のドジのフォローができないのが心配で仕方がねえ」
「失礼ね……いくら私でもそんなドジばっかりじゃないわよ」
「そうは言うがな大河、おまえ、去年の惨状を忘れたわけじゃねえだろ?」
「う……」
「でだな、一応対策を考えてみたんだが」
「……対策って、何よ?」
 むくれる大河の目の前で、竜児はぴっと人差し指を立てて。
「まず、周りに気をつけること」
「またずいぶんと大雑把ね」
「基本だからな。手元足元とかだけじゃなくて、段取りを事前に確認しておく事なんかも含まれるぞ」
 中指も立てて、Vサイン……ではなくて、
「二つ目、頑張り過ぎないこと」
「手を抜けっていうの?」
「そうじゃねえ。だけど、おまえは必要以上に緊張したり無理しようとしたりすると途端にドジをする確率が高くなるからな。一つ目と繋がるけど、そればっかりになって周りが見えなくなるし」
「……わかったわよ、気をつける」
 さらに立てられる指がもう一本。
「それから最後に」
「まだあるの?」
「当日の弁当のおかずは唐揚げにするつもりなんだが……ドジ一回につき大河の分の割り当てを一個減らすから」
「えーっ!?」



「まさか本当に一回もドジをしないとはな……」
「……わ、私も自分でびっくり」



作品一覧ページに戻る   TOPにもどる

inserted by FC2 system