「ねえ竜児」
「おう?」
「竜児はどうしてみのりんを好きになったわけ?」
「……は?何でそんなことを?」
「だって、竜児とみのりんって接点無かったじゃない」
「いや、皆無ってわけじゃなかったんだが……じゃなくてだな、普通恋人にそういうことを聞くか?」
「だって気になっちゃったんだもの。それに、竜児だけ私と北村君のこと詳しく知ってるのは不公平じゃない」
「おう……まあ大河がいいならいいけど……でも、そんな大した話じゃねえぞ?」
「ん、いいからいいから。早く早く」
「えっとだな、そもそもはソフト部繋がりで北村と櫛枝がよく話してたんだよ」
「でも一年の時は別のクラスだったでしょ?」
「おう。五月には北村が生徒会に入ってただろ、それで部活関係の連絡は休み時間のうちにすることが多くてさ。で、来るのが大概櫛枝だったんだ」
「あー、そういえば北村君も時々みのりんと話しにうちのクラスに来てたもんね」
「でさ、その最初の時に偶々俺が北村と話してて……『へ〜い、ちょ〜っとお邪魔しマッスル〜』ってにっこり笑いかけてくれたんだよ」
「ふんふん、それで?」
「それから時々同じように会う機会があって……可愛いし、明るいし、何より俺のこと怖がらねえし……」
「で?」
「でって……それだけだ」
「はぁ?」
「だから言っただろ、大した話じゃねえって」
「何か話したりとか無かったの?」
「あるわけねえだろ、まともに挨拶もできなかったってのに」
「……はぁ……」
「な、なんだよ、その哀れむような眼差しは」
「哀れんでるのよ。まさかあんたがそこまで情けない男だったとはねえ……どんだけ自分に自信無かったのよ」
「しかたねえだろ、初対面で引かなかった女子なんて初めてだったんだから」
「……そうなの?」
「おう、引くぐらいならまだマシなほうでな、普通はまずビビる。酷い時には泣いたり逃げたり……いきなり謝られたこともあるぞ」
「そ、そうなんだ……ん?」
「おう、どうした?」
「今の話からすると……竜児ってばばかちーに惚れてたかもしれないのね……」
「はぁ!? 何でそうなる?」
「だってばかちーも初対面の竜児のこと怖がらなかったし、少なくとも上っ面は『明るくて、可愛かった』わけだし、その上何かとあんたにちょっかい出してたし」
「いや、それはねえよ」
「何で断言できるのよ?」
「早々に本性知ってたし……何より耐性が出来てたからな」
「耐性って?」
 竜児が無言で指差したのは、
「……私?」
「おう。初対面じゃ逆にビビらされて、色々とほっとけなくて、殆ど共同生活までしてて……ちょっとやそっとのインパクトやちょっかいで越えられるもんじゃねえだろ」
「なんか、あんまり褒められてる感じがしないわね……」
「それに多分あの頃にはもう、自覚してなくても、大河のことが好きだった……と思う」
「……そ、そうなんだ……」



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