「寒っ!」
「おう……」
 図書館を出た大河と竜児に吹きつけてきたのは晩秋の冷たい風。
「うー……やっぱり上にもう一枚ぐらい羽織ったほうが良かったかしら」
「午後から冷え込むって天気予報で言ってたもんな……マフラー使うか?」
「ん……いい。竜児が寒くなっちゃうし」
「いや、俺なら大丈夫だから」
「いいってば、それよりもっと良い方法思いついたから」
「おう?」
 大河はにんまりと笑みを浮かべて、竜児の腕にぎゅっと抱きついて。
「おうっ!?」
「こうやって竜児にくっついてれば、だんだん暖かくなってくるのよ」
「お、おう……」
「んー、まだちょっと足りないかなー? ねえ竜児、抱っこして」
「できるかっ!? こんな往来で!」
「じゃ、おんぶ」
「それも無理っ!!」
「ぶー、竜児のケチー」
「…………よしわかった。抱っこだな」
「え?」
「ここから大河の家までずっとお姫様抱っこで送り届けてやる。勿論そのまま商店街も練り歩いてな」
「ちょ、ちょっと待って竜児!?」
「なんだよ、抱っこしてほしいって言ったのは大河じゃねえか」
「そそ、それはそうだけど」


「……あいつら、あたし達が一緒なの完全に忘れてるわよね」
「まあいいじゃないですかあーみん。見てるこっちもなんだか暖かくなってくることだし」
「ならねえよ!」




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