「……おい大河」
「なによ」
「お前、どうやったらたったの2・3日でこれだけ散らかせるんだよ?」
「う、うるさいわね」
 竜児が呆れるの無理はない話で、大河の部屋の状態ときたらまさに目を覆わんばかり。
 ゴミ箱の横に放られたお菓子の空き箱にペットボトル。床には紙屑やら脱ぎっぱなしの靴下やらエトセトラ。
「まったく……こういうのだってメモ用紙にするとかだな、せめてきちんと分別して……」
 言いながら丸められた紙屑を拾い上げ、広げようとした瞬間。
「んにゃあぁぁっ!」
 突然の奇声と共に、それを竜児の手から叩き落とす大河。
「おうっ!?」
「な、何してるのよアンタ!」
「何って、紙類はきちんと広げて重ねてだな」
「そうじゃなくて!なに人のぷ、プライバシー覗こうとしてるのよっ!」
「はぁ?そんなつもりは毛頭ねえよ!大体見られたら困るようなもんをその辺に転がしてるんじゃねえ!」
「うるさいうるさい!出てけこのエロ犬!」
「出てけって、掃除はどうするんだよ!」
「あ、明日!明日にしなさい!休みだからたっぷり時間とれるし!」
「この惨状を放っておいたまま帰れるわけねえだろ!」
「いいからとっとと出てけって言ってるのよこのグズ!」
「……わかった。ただしそのかわり、明日は隅々まで徹底的にやるからな!大河も手伝えよ!」


 翌朝、竜児が郵便受けを覗くと、そこには真っ白な封筒が。
 新聞の下にあったから昨夜の内に入れられたものだろうけど、切手はおろか宛先も署名も無し。
「これは……大河か?」
 開けば中には便箋が一枚。広げて見れば、
「おう……」
 思わず漏れたその声に含まれていたのは、驚きと、喜びと。
「そういや今日は……勤労感謝の日、か」

     『竜児へ
      いつもありがと』




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