あれ?あんたこんな時間までなにやってんの?高須君と帰ったんじゃなかったの?…っておい、いきなり『うっさいばかちー。あんたこそなにやってんだ』ってなんだよ?
あたしは図書室で受験勉強だよべ・ん・きょ・う!つか普通に話しかけただけなのに噛み付かれる筋合いないんですけど。ちょーっと生意気じゃね?
亜美ちゃんムカついてきちゃったなー。おいコラなんとか言え…って、あんた…泣いてんの?
いやいや『泣いてなんかない!』って、ばっちり涙と鼻水出てるんですけど。あーもう、とりあえずほれ、涙拭けよ。
うげっ!?こら!鼻水くらいティッシュ使えバカ虎!…あー…あぁ…はぁ、もういいわ。すっかり毒気も抜かれちゃったし。
んで、本当なにがあったのよ?亜美ちゃんだって鬼じゃないんだから話くらいは聞いたげるわよ…え?チョコ?
そういや、昼間あたしと実乃梨ちゃんが高須君にチョコあげたとき、あんただけあげてなかったわよね。てっきり高須君の家とかで渡すのかと思ってたけど…
あんた、なんか隠してるでしょ?ここまできて『なんでもない』わけねーだろおい、正直に白状しな!
………うわー、見事にばっきり割れてるわねこれ…。しかもド真ん中。おまけにハート型だし…手作りじゃんこれ。こりゃ確かに縁起悪すぎて渡せないわねぇ。
うんうん、『朝登校中に転んで、もしやと思って学校着いてから確認したら案の定割れてた』…と。あんたどんだけドジなのよ。
…わー!泣くな!泣くなって!泣いたってチョコは元に戻んねーんだから。ほら、さっさと行くよ!え?『どこへ?』って、家庭科室よ家庭科室。
こうなりゃ今からそいつ溶かして新しいチョコ作り直すしかねーだろ。どうせ市販のチョコを買うなんてあんたの心が許せないんでしょ?
あんたと高須君のバカップルっぷりを毎日毎日見せ付けられてりゃ、あんたがどれだけそのチョコに高須君への想いを込めてたかなんてわかるっつーの。
さぁ、もう下校時刻とっくに過ぎてんだから、先生に見つかったら強制退去させられるよ。さっさと支度しな!
…え?『なんでそこまでしてくれるの?』って?………さーね、あたしだってわかんねーよ。
ただ…さ、大切な人がいる女の子が『今日』泣くのは絶対に駄目。そう思っただけ。
『あたしのキャラじゃない』って?…ふん、それだけ憎まれ口が叩けりゃもう安心ね。そんじゃ、ちゃっちゃと作るわよ。元より凄い奴…高須君が感動にむせび泣くようなの作ってアッと言わせてやんな!
確か調理実習のときにチョコ用の型は見たからオッケーでしょ…あ、どうせならスライスアーモンドとかチョコペンでデコレートするのもいいわね。あたしがひとっ走り買ってきてやるわ。先行って鍋にお湯沸かしときな。


…ふう、あたしも随分とおせっかいさんになっちまったもんだね。まぁ、なんだかんだであいつらのこと色々見てきたし、ね。
あ、そうだ。ただチョコ渡すだけじゃ芸がないから、こいつに後で色々吹き込んでやろう。うん、それくらいしたってバチは当たらないはずよね。
―――高須君びっくりするだろうなぁ、『ちび虎の裸リボン』♪



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