【プロローグ】
「う…嘘でしょ…」
「そ…そんな馬鹿な…」
「「なんで今日が『始業式』の日になってるんだ(のよ)…っ!?」」
「俺の記憶はそのままだ…でも…大河は…」
「私の記憶はそのままね…でも…竜児は…」
「「きっと、まだ自分を好きじゃなかったころのまま………」」
「こうなったら…」
「取るべき道は一つね…」


【始業式・朝】
「トイレに行こう。そうすれば、俺はそこのドアで…」
「このまま教室に入ろうとすれば、私はそこのドアで…」
「…っつ…。お、おう、すまん大河…じゃなかった、逢坂」
「…え?えぇ、別に平気よ竜児…じゃなくて、高須君。あ、学ランはだけちゃってるわ。竜、ね…格好いいとは思うけど、あんまり学校に着てくるセンスじゃないわよ、それ」
「…あれ、まてよ?なんだか…」
「…本当に体験したことと…微妙に違ってたわね…」


【数日後・放課後】
「…か、鞄、鞄…と、あれ?」
「………」
「あ、逢坂?」
「な、なに?」
「い、いや、なんでもない。また、明日な」
「そ、そう。また、明日ね」
「………おかしい、あいつは北村の鞄と間違えて俺の鞄にラブレターを入れたはずなのに…取り返そうと…しなかった…?」
「…これでいいのよ…これで…もし、ほんのわずかでも…望みが…あるのなら…」


【高須家・午後七時】
―――高須竜児さまへ。逢坂大河より。(もしも迷惑でも、かならず中身を読んでください)
「…こ、これ、は…」
『突然、こんな手紙を渡すことを許してください。でも、どうしてもあなたに話さずにはいられないお話があります』
「こんなの…前の筋書きにはなかったぞ…」
『今夜午前二時、あなたのお宅へ伺います。どうか窓を開けておいてください。あと、できればあなたも起きていてください。Tシャツとパンツだけで寝る姿は、さすがにみっともないと思います』
「…ここまで分かってるってことは…まさか、本当にまさか…」


【高須家・午前二時】
「…読ませてもらったぜ、あれ。ラブレター…ってわけでもなさそうだったけどな」
「ええ…そうよ。私は高須君…あんたに言わなくちゃいけないことがあるの」
「…なんだよ逢坂。言ってみろよ」
「聞いたらたぶん…いいえ、きっとあんたは私を馬鹿にするわ。『気が狂ったか』とか『漫画や小説の読みすぎだ』とか。…でも!」
「大丈夫だ…絶対におまえの話を笑ったり、疑ったりしないって誓う。約束だ!」
「…分かった。それじゃあ話すわ。私は…私は、この世界の私じゃない」
「…っ!?」
「私は…ここからもっと未来の世界から来たの。その世界で私は…あんたと恋人…いいえ、婚約者になってるのよ」
「…ぁ……」
「あんたがみのりんのことを好きだってことは知ってる。でも…ぐすっ…どうしても…」
「…たい…が…」
「…ひぐっ…うぅ…い、言わずには、いられなかった…。自分の気持ちに…嘘はつけなかった…って…え?あんた…今、なんて…」
「たいが…大河…大河!やっぱりおまえ、『俺の』大河なんだな!?」
「……………うそ…りゅう…じ…竜児?あんた、『私の』竜児なの?」
「ああそうさ。気がついたらタイムスリップ…って言うのかこの場合?…とにかくしてて、俺もおまえと同じこと考えてたんだ」
「私もそうよ。本当のことを打ち明けて、もう一度、四月からやり直そうと考えてたの。今度は…もっと早く、竜児に好きって言えるように…竜児に好きになってもらえるように」
「俺もさ…もっと早く、大河に好きって言えるように…大河に好きになってもらえるように」
「でも…そんなこと必要なかった。だって…『私の竜児』が…私と同じように、ここにいてくれたんだもん…」
「ああ…奇跡でもまぐれでも、この際なんでもいい。もう一度やり直そう、大河。…今度は初めから、二人の心もずっと一緒に、な」
「…うん…うんっ!竜児、改めて…よろしくね!」
「おう!俺の方こそ…よろしくな!」
「…えへへ。でも竜児、これってある意味得してるわよね」
「ん?なんでだ?」
「だって…最初から私たち…恋人として過ごせるんだよ」
「……………ぁ…」
「こ、こら…そこで赤くなって黙り込むなぁ…恥ずかしいじゃないのよ…このエロ犬…」
「…う。す、すまねぇ」
「…まぁいいわ。ほらほら、ずっとあのマンションで過ごしてた設定はそのままなんだから、今私はとーーーーーってもお腹が空いてるの!『本当』なら話の前に気絶してるんだからね!」
「お、おう…そうだったな。んじゃ、チャーハン作ってやるよ。もちろん、『あの』チャーハンを、な」
「わーい!ありがとう竜児………大好きよっ!」


【エピローグ】
「みのりん!まだ待っててくれたの?」
「おっそいよ大河。今日も先に行っちゃうところだよ…って、えーーーーーっ!あれっ、うそっ、なにっ!?」
「どしたのみのりん?」
「どしたのじゃないよ!…そ、そっか〜、私知らなかったなぁ、大河と高須君がツーショット登校キメちゃうような間柄だったなんて…」
「違うでしょみのりん、今どきツーショットなんて誰も言わないのよ」
「そっか〜!じゃあなんだ、あれか、今どきは…あっ分かった!アベックだ!?」
「そうじゃねぇよ櫛枝。今どきの言い方は…なぁ、大河」
「うんっ!今どきは…『フィアンセ』って言うんだよ、みのりん」
「ふぃ、ふぃあんせ…?……………って、えーーーーーーーーーーっ!?ちょ、ちょっと待っておくれお二人さん!あんたら本当に、いつからそんなに親密…どころか、将来を誓い合うほどの仲にーーーーーーーーーーっ!?」
「行こっ、竜児♪」
「お…おう、大河!」
「ち、ちょっとーーーーっ!どーいうことなのさーーーーーーーーーっ!?ちゃーーーーーんと説明してもらうからねーーーーーーーーーーーーっ!!」


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