【激闘!プール対決・その1】

「ごめんなさぁ〜い!髪まとめてたら時間かかっちゃったぁ〜」
「「「うおおおぉぉぉぉぉぉ!」」」
「ビ、ビキニっ!」
「俺、多分この日のこと死ぬまで忘れねぇ……っ!」
「ずっと雨だったからいつもの水着乾かなくってぇ。でもでも、これって校則違反かなぁ?」
「……初めて見たわ。学校のプールでビキニ着てる馬鹿」
「おおっ!手乗りタイガーの登場だ!」
「携行品はビート板一枚だけか……絶対木刀とかで武装してくると思ってたんだけどな」
「ちょっとあんた、それで泳ぐ気?」
「そうよ、いけない?補助具の使用は禁止なんて聞いてないわよ?」
「ふん、まぁカナヅチから進歩しただけでもよかったんじゃない?やっぱり泳げませぇんって不戦敗になってもつまらないし〜」
「言ってろバカチワワ」
「誰がバカチワワよ!?」
「あ、間違えた。バカビキニだ」
「なにがバカビキニよ!?」
「それではこれより、自由形一本勝負を行います!あーみん、意気込みを一言!」
「はぁーい!とにかく楽しくやれたらいいなって、それだけでーす♪」
「あみたーん、かわいいよーっ!」
「頑張れーっ!」
「大好きだーっ!」
「大河、あんたも一言言いな!」
「……竜児っ!」
「おっ!おうっ!?」
「……………勝つわよっ!勝って、私も一緒に別荘に行くんだ!」
「………おう!負けんな、大河!」
「タイガー!頑張れーっ!儲けさせてくれーっ!」
「最強伝説はまだ続くぞーっ!」
「高須てめー羨ましいぞーっ!」
「このバカップルめがーっ!」
「もう結婚しちまえーっ!」
「……うるっさいわね!ほっとけボケどもがぁっ!」
「それじゃあ両者、位置について………用意―――」

ピィィィィィィィィィィ―――――――――ッ!

「うおぉぉぉぉっ!速ぇっ!手乗りタイガーの勝ちだぞこれは!」
「くそーっ!負けるなあみたーん!」
「いけいけタイガー!」
「あみたんも追い上げてきたぞ!」
「よし!いけるぞ大河!その調子だ………って、おうっ!?」
「どうしたんだタイガー?」
「急に潜ったぞ?」
「顔をつけた方がスピードが出るとかじゃねぇの?」
「いやむしろ…一気にスピードダウンしてねぇか?」
「おい高須、どういうことだよ!?」

―――大丈夫か!?器用な溺れ方しやがって!
―――あっ、足が、つってるーっ!
―――卑怯な手口の天罰だ!

「―――――あぁっ!あいつ、まさか!?大河、大河ぁぁぁ!」
「わー!高須が乱入しようとしてるぞー!」
「止めろーっ!あみたんの邪魔はさせーんっ!」
「ちょっ、おまえら川嶋派か!?離せ!大河が、大河が……っ!」
「あみたーん、いけいけーっ!」
「タイガーが弱ってる今がチャンスだ!」
「高須は押さえとくぜー!」
「くそっ!離せ!あいつは溺れてるんだ!これは無効試合だ!おい、誰か!誰かっ!」
「あぁっ!抜かれるーっ!」
「あみたん、そこだーっ!」
「タイガー、負けるなー!」
「おい!おいって!なんで気が付かねぇんだよ!なんで助けてくれねぇんだよ!」

―――うそでしょ!?竜児!竜児―っ!
―――誰かっ……ねぇ誰、かっ!……げほっ!………えぇーんっ!
―――なんで気が付かないの!
―――なんで助けてくれないの!

「よーし、高須だって乱入しようとしたんだ!俺たちもあみたんに加勢するぞ!」
「おうよ!タイガーには悪いが」
「妨害させてもらうぜ!」

「…っ!………なんだよ、それ………」
―――『一周目』のときは私が変な小細工しちゃったからあんな大騒ぎになって……竜児を危険な目に遭わせちゃったから……。
「あいつは………大河は…………っ!」
―――だから今回は真っ向勝負!正々堂々とあいつに勝ってみせるわ!
「………触るな…」
「よっしゃあいくぜーっ!タイガー覚悟しろーっ!」
「ん?高須?なにぶつぶつ言ってん………」

「触るなーーーーーーっ!大河は俺のもんだ!誰も触るんじゃねぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーっ!!」

「うわぁぁぁっ!高須がキレたぁぁぁぁぁっ!」
「離せこのやろーーーーーっ!」
「ひ、ひぃぃぃぃぃっ!」
「大河ぁぁぁぁっ!今助けるぞぉぉぉぉぉっ!」
「………なんか、高須さ、今さらっと……ものすごいこと叫んでなかったか?」

「………ゴール!どーだ、正義は勝ーーーーーーーつ!」
「ぎゃーっ!高須が乱入したーっ!」
「誰か、高須を止めろー!」
「無理だ!怖ぇぇぇぇぇっ!」
「っていうか………タイガー、あれ、溺れてない?」

「………って、なによこの状況!?なんでぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」



【激闘!プール対決・その2】

「大河、大丈夫か?」
「うん……平気、水は飲んでなかったから。それより……ごめん、竜児。勝負……負けちゃった…」
「気にすんな。あれはアクシデントだ。こんなもん、無効試合だ。そうだろ?櫛枝、川嶋」
「うーん……まぁ、競技中の事故ってことで仕切り直しにしたいところだけど……プールって、今日が最後だよね?」
「そうよね〜、やり直しができないなら、今回の結果を反映させるしかないんじゃない?」
「お、おい!ちょっと待ってくれよ!それじゃあ、大河は……」
「待って。別にあたしの別荘に連れて行かないとは言ってないわ」
「おうっ!?」
「最初に言ったでしょ?『楽しくやれたら、それだけだ』って」
「ばかちー……」
「だいたい、元々はちゃんと誘うつもりだったのに逢坂さんが全然取り合ってくれなかったからこんなことになっちゃったわけだし〜?」
「うぅ……っ」
「それに、夏休み中ずっと逢坂さんだけ高須くん家でお留守番なんてかわいそうすぎるもんね〜。毎晩『竜児、竜児ぃ』って高須くんの枕を濡らされても後味悪いしさ」
「そ、そうか……川嶋、ありがとな」

「………ん?なぁ、亜美。なぜ逢坂が高須の家で留守番をするんだ?それに高須の枕を濡らすとは……高須の枕で寝ているということになるぞ?」
「そう言えばそうだね………あーみん、高須くん、私たちになんか隠してないかい?」
「「「……………あ」」」
「逢坂まで、どうしたんだ?」
「大河〜、あんたまで私に隠し事かい?………あーみん、まさかとは思うけど………大河って、高須くんの家に……」
「い、いやだなぁ実乃梨ちゃん、なに言ってるのよ〜!そんなわけないじゃない!アレよアレ、言葉のあやよ!」
「お、おう。そうだぞ櫛枝!ほら、俺と大河って付き合ってるだろ!?大河は……ちょっとワケありで一人暮らしだから、俺ん家で一緒に飯を食ったりもするし、そういうことだよ!」
「そうよみのりん!私と竜児は家が近所だってのは知ってるでしょ?だからご飯とか色々助けてもらってるというかなんというか………」
「「「……………って言って、信じる?」」」
「無理だね、北村くん」
「無理だな、櫛枝」

「うわぁぁぁぁぁぁバレたぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「こんのばかちー!あんたなんてことしてくれたのよぉぉぉっ!」
「うわーん!だってだってぇぇぇぇぇ!うっかり言っちゃったんだもん!」
「終わった……なにもかも…」
「……高須くん、念のため…もう一度だけ確認するけど……君と大河は……その……まさか……一緒に……」
「………あぁ、もうこれ以上隠し通すなんてできねえよ。正直に言うさ。そうだよ、一緒に……住んでるよ」
「高須………おまえ…」
「待って北村くん!竜児は悪くないの!元々は私が言い出したことなのよ!私のわがままで、竜児はそれを聞いてくれただけなの!」
「違う!大河は提案しただけだ。採用したのは俺の責任だ!だからこいつは悪くねぇ!」
「………水臭いぞ高須、逢坂。どうしてもっと早く教えてくれなかったんだ」
「「…………は?」」
「ゆ……祐作?」
「まぁ聞け亜美。つまり、高須は一人暮らしをしている逢坂の生活を助けているんだろ?」
「お、おう」
「それに、二人が婚約していることは既に周知の事実だ。そうだろ逢坂?」
「う、うん」
「赤の他人同士が同居しているのはさすがに問題だが……おまえたちに関して言えば、なにも問題はないんじゃないか?」
「いや……そうは言っても……やっぱりまずいだろ?俺たちはまだ高校生だし……」
「そう思うなら二人とも、周りの声を聞いてみろ」
「「………あ」」

「なんつーか……今さらだよな」
「別に同棲してるのがバレたって……ねぇ」
「普段のバカップルっぷりを見てれば、大方予想はできたしね。本当だったのはちょっとびっくりしたけど」
「知ったところで特になにか変わるわけでもないし」
「つーかもうおまえら結婚しろ」

「………と、言うわけだ。さてみんな、高須は本当に信頼できる奴だ。逢坂と多少の『仲のよさ』はあっても、取り返しのつかない間違いが起きることはないと、俺は思う」
「そうだね、大河のことをとても大切に想っているのは私も保証するよ!なんたって『婚約者』だもんね」
「それに、逢坂が一人暮らしで、高須と同居しているのにはそれなりの事情があるみたいだ。部外者である俺たちが家庭の事情にこれ以上首を突っ込むのは無粋だと思うのだが…」
「うん、じゃあこの話はこれでおしまい!2−Cだけの秘密!他言無用だよ!」
「「「「「おーーーーっ!」」」」」

「………は、はは…おまえら……ありがとうな」
「みんな、いい奴ばっかりだよね、竜児……」
「……おう、そうだな」

「…ねぇ……祐作…」
「ん、どうした?亜美」
「フォローしてくれて、ありがと……私さ、その…二人の……かなりやばいこと、バラしちゃって……」
「うむ、正直、聞く人が聞いたら、大問題になっていたかもな」
「………っ!」
「でも、2−Cにはそんな奴は一人もいなかったみたいだぞ」

「ねぇねぇ逢坂さん、高須くんと一緒に住んでるってことは、毎日のご飯は高須くんが作ってくれるのよね?いいなー」
「高須くんって、家だとどんな雰囲気なの?やっぱりラブラブいちゃいちゃしてるの?」
「高須てめー!まさかとは思っていたがマジだったのかよ!俺タイガー派だったのに!」
「これで完全に手乗りタイガーは高須のものって証明されちまったわけだな」
「つーか、そもそもさっき『大河は俺のもんだー!』とか叫んでたよな」
「『誰も触るんじゃねー!』とか、普通は言えないよなぁ」
「んで、ぶっちゃけ二人はどこまでいってるんだ?」
「ちょ、待て待て!俺と大河は断じてそんなんじゃねぇ!まだ、ちゃんと清い関係だ!」
「「「うおおおぉぉぉぉぉっ!」」」
「逢坂さん、本当なの?」
「でも、キスくらいはしてるわよねぇ?こないだプールでもしてたし」
「へー、高須くんって、見かけによらず紳士なのね」
「そ、そうよ!竜児はちゃんと、私を大切にしてくれてるんだから!」
「「「きゃーーーーーーーっ!」」」

「……そう、ね」
「いい奴らだろ。クラス委員として、2−Cは俺の誇りだ。もし万一、二人が一緒にいられなくなって『駆け落ちするようなこと』になっても、みんな全力で協力してくれる。そんな気がするんだ」
「……なるほど、よーく分かったわ。あいつら見てたら、あたしもそんな気がしてくるもの」
「どうだ?高須たちと『いい友達』になれそうか?」
「そうね、少なくとも、一緒にいて退屈だけはしないわ」
「そうか、それならよかった。おまえが『自分が後から入ったせいで、俺たちの輪が崩れるんじゃないか』なんて、いらぬ心配をしてるのかと思ったぞ」
「………ばーか、よけいなお世話だっつーの」

「こらー!おまえら!大河が困ってるじゃねえか!この話は終わ……ええい散れ散れ!大河は俺のもんだって言ったろ!誰も触るんじゃねぇぇぇぇぇーーーーーーーっ!」


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