「ふぅ……」
 ブレーキペダルから足を離して、竜児はほっと一息。
「ちょっと竜児ってば!」
「おうっ!?」
 途端に助手席から浴びせられる大河の怒声。
「な、なんだよ大河」
「なんだよじゃないわよ! さっきからどれだけ呼んだと思ってるの!」
「お、おう、すまねえ」
「大体ね、あんたは緊張しすぎなのよ。口はずっとへの字だし、血走らせた目をこーんな三角にさせてるし。対向車線のおっさんがビビってたわよ」
「仕方ねえだろ、初心者なんだから。車だってじいちゃんが貸してくれてる物なんだし」
「それにしたって度が過ぎるっての! あーあ、せっかくの初ドライブが散々じゃないの」
「いや、ドライブって……近所のスーパーに来るだけなのに大河が無理矢理乗り込んできたんじゃねえか」
「ドライブはドライブでしょ」
「そりゃ広い意味ではそうかもしれねえけど……」
「まったく、コレを聞かせてもらえるのはいつになるのかしらねぇ?」
 言いながら大河が取り出したのは四枚のMD。
「!? おい大河、まさかそれ……」
「そ。あんたが作った『彼女とドライブの時にかけるBGM』春夏秋冬各バージョンよ」
「い、いつの間に……返せ!」
「だーめ。きちんと聞いてから」




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