「フナムシはフナムシらしくカサカサしていろ!」
 傲岸不遜に言い放つ大河を前に、なぜか竜児は感慨深げな表情で。
「おう……やっぱ似てるなあ……」
「……ねえ竜児、妙なセリフ言わせたりして、一体何なのよ?」
「いや、今やってる携帯のゲームなんだけど、ヒロインの一人の声が大河にそっくりでな」
「なんか、ヒロインのセリフじゃないような気がするんだけど」
「いいんだよ、そういうキャラなんだから」
「どういうキャラよ……」
「しかし、声だけじゃなくて口調もそのものだよな……なあ大河、これならお前、声優とかもいけるんじゃねえか?」
「んなわけないじゃない。そういう仕事はね、もっと色んな役柄を自由自在に演じ分けられなきゃいけないの……って、ばかちーが前にそんなこと言ってたもの」
「おう、そうなのか……」
「ところで竜児、そのゲームってどんなの?」
「おう、恋愛シミュレーションってことになってるけど、実際にはアドベンチャー……というかノベルみたいなもんだな。選択肢での分岐とかねえし」
「竜児」
「おう?」
 ふと見れば大河は穏やかな笑みを浮かべていて。
「あんた婚約者がいる身でそんなゲームに手ぇ出してるわけ?」
 だけどその目はカケラも笑ってなくて。
「い、いや、友達がやってるとアイテムが増えるからとかで頼まれてな。基本無料だし。ま、付き合いだ付き合い」
「でもプレイしてるのよね?」
「そりゃ登録したからにはやらないとMOTTAINAIし……たかがゲームじゃねえか」
「たとえゲームでも、恋人が他の女にうつつを抜かすなんてことを私が許すと思う?」
「……お……おうっ……」




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