「えーっと、後は合わせ味噌と……」
 調味料コーナーに向かう竜児の後に、そろそろと忍び寄る小さな影。
 手にしたいくつもの包みを籠に滑り込ませようとした瞬間、竜児がくるりと振り返って。
「……大河」
「ぶー、竜児のケチ」
「お菓子が欲しいなら自分で買えばいいじゃねえか」
「だって、お小遣い制になって前ほど自由に使えなくなっちゃったんだもの」
「だからってうちにたかるんじゃねえ」
「いいじゃない、ちょっとぐらい」
「ちょっとじゃねえだろ、大河の場合。今だっていくつ持ってやがる。大体小遣いっていっても俺より多いんだろうが」
「女の子は色々と物要りなのよ。って、え? おやつ代ってひょっとして竜児のお小遣いから出てるの?」
「当たり前だろ。泰子も含めて皆で食べるんならともかく」
「でもまー、いいわよね。知ってるんだから、竜児が実はけっこう貯め込んでるの」
「いや、それはイザと言う時のためのだな……というか、残念ながらついこの間殆ど吐き出しちまったばっかりだ」
「へ? あんたが? 一体何に使ったのよ?」
「おう、そ、それは……」
 思わず泳いだ竜児の視線を追えば、行きつく先は大河自身の左手薬指に宿る銀色の輝き。
「……お、お菓子、返してくるわね」
「お、おう。まあ、一つぐらいならいいぞ」
「えと、それじゃ……竜児は何が食べたい?」



作品一覧ページに戻る   TOPにもどる

inserted by FC2 system